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医療法人東西医会 小泉医院遠絡医療

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新型コロナウイルス感染症後遺症

難病指定医·遠絡指導医による
遠絡医療・バイオレゾナンス
EAT. ア-ユルヴェ-ダ. リハビリ

の診療をしている総合医院です

患者様向け

新型コロナ後遺症に対する遠絡療法の効果

下図で赤字の症状に対し、遠絡療法の効果があることを当院の実践の中で確認しています。

(2022年2月時点)

1-新型コロナウイルス感染症とは

新型コロナウイルス(COVID-19)はcoronavirus disease 2019を略した言葉です。
2019年12月に中国・武漢で原因不明の肺炎として報告されて以降、日本を含む全世界に感染拡大している状況であります。SARS-CoV-2と呼ばれるウイルスが原因で起きる感染症です。

WHOの発表によると、感染から発症までの潜伏期は1~14日間であり、曝露から5日程度で発症することが多いとされています。感染可能期間は発症2日前から発症後7~10日間程度と考えられており、有症者だけでなく無症状病原体保有者からの感染リスクもあります。初期症状はインフルエンザに似ており、発熱やのどの痛みなどのかぜ症状や嗅覚味覚障害、咳、だるさ(倦怠感)を呈します。感染伝播としては飛沫感染が主体と考えられています。

世界保健機関(WHO)は、主な変異ウイルスを公衆衛生に与える影響の大きさによって、次のような3段階に分けて国際的な監視体制をとっています。それぞれの国では各地の実情に合わせて独自に「VOC」や「VOI」、「VUM」となる変異ウイルスを決めています。

①「懸念される変異株=「VOC」は感染力が強まる、感染した際の重症度が上がる、それにワクチンの効果が下がるなどの性質の変化が起こったとみられる変異ウイルスで、最も警戒度の高いウイルスです。

②「注目すべき変異株=「VOI」は、感染力やワクチンの効果などに影響を与える可能性があり、地域での感染が複数の国で起きるなど、公衆衛生上のリスクになりえるとされる変異ウイルスです。

③「監視している変異株=「VUM」は、影響の度合いがはっきり分からず監視が必要な変異ウイルスに加え、各地での検出が少なくなったVOCやVOIも位置づけられます。

国立感染症研究所での分類
日本でも国立感染症研究所が2021年12月1日時点で「VOC」に「ベータ株」と「ガンマ株」、「デルタ株」に加えて、新たに「オミクロン株」の4種類を指定しています。

2-新型コロナウイルスの構造

電子顕微鏡で観察されるコロナウイルスは、形態が王冠“crown”に似ていることからギリシャ語で王冠を意味する“corona”という名前が付けられた。

直径約100nmの球形で、表面には突起が見られます。脂質二重膜のエンベロープの中にNucleocapsid(N)蛋白に巻きついたプラス鎖の一本鎖RNAのゲノムがあり、エンベロープ表面にはSpike(S)蛋白、Envelope(E)蛋白、Membrane(M)蛋白が配置されています。

ウイルスゲノムの大きさはRNAウイルスの中では最大サイズの30kbであります。遺伝学的特徴からα、β、γ、δのグループに分類されます。(国立感染症研究所より)

3-懸念される新型コロナウイルス変異株

𝛂
(アルファ株)
𝛃
(ベータ株)
r
(ガンマ株)
𝜹
(デルタ株)
𝑂
(オミクロン株)
2020年12月 2020年5月 2021年1月 2020年10月 2021年11月
イギリス 南アフリカ ブラジル インド 南アフリカ

これらはいずれも変異によって性質が変化した新型コロナウイルスです。
これらに共通しているのは、ウイルスの「スパイクたんぱく質」という部分の遺伝情報に変異が起こっていることです。
このスパイクたんぱく質は新型コロナウイルスがヒトの細胞に感染する際の足場となる非常に重要な部分で、変異によって性質が変わったことでこれまでの新型コロナウイルスより感染しやすくなっていると考えられています。

(1)アルファ株

イギリスで見つかった変異ウイルスの「アルファ株」は2020年12月上旬に初めて報告され、その後世界中に広がりました。

このウイルスは「スパイクたんぱく質」に「N501Y」と呼ばれる変異がおこり、「スパイクたんぱく質」の501番目のアミノ酸がアスパラギン(略号N)からチロシン(略号Y)に置き換わっているため、従来のウイルスに比べて感染力が強く、入院や重症それに亡くなるリスクも高くなっています。

国立感染症研究所が日本国内での感染力の強さを計算したところ、感染の広がりやすさを示す「実効再生産数(1人の感染者から何人に感染が広がるかを示す)」が従来のウイルスより平均で1.32倍、高くなっていたということです。

(2)ベータ株:

2020年5月には発生していたとされ、11月中旬に南アフリカで行われた解析ではほとんどがこの変異ウイルスだったとみられています。

このウイルスは「N501Y」の変異に加えて抗体の攻撃から逃れる「E484K」という変異もあることから、ワクチンの効果への影響が懸念されています。

WHOによりますと、この変異ウイルスは従来のものと比べ感染力が50%高いとみられるとしています。また、数理モデルを使った解析では、従来のウイルスに比べ、「実効再生産数」が36%高いと推定されるとしています。

(3)ガンマ株:

ブラジルで広がった変異ウイルスは「ガンマ株」と呼ばれています。
2021年1月6日、ブラジルから日本に到着した人で最初に検出されました。

南アフリカで確認された「ベータ株」と同様に「N501Y」に加えて抗体の攻撃から逃れる「E484K」の変異もあることが分かっています。

感染力は従来のものより高いとされ、WHOによりますと、数理モデルを使った解析では、従来のウイルスに比べ、「実効再生産数」が11%高いと推定されるとしています。

(4)デルタ株:

インドで見つかった変異ウイルスのうち、最も感染が拡大しているのが「デルタ株」です。警戒度が最も高い「懸念される変異株」とされています。

この変異ウイルスはウイルスの突起の部分にあたる「スパイクたんぱく質」のアミノ酸が変化していて、主な変異として感染力が高まるのに関わるとされる「L452R」のほか、「P681R」、「E484Q」という変異があります。

「デルタ株」の感染力については、従来のウイルスやイギリスで最初に確認された「アルファ株」などと比べて高まっているとされています。国内外の研究から、おおむね従来のウイルスに対して2倍程度、「アルファ株」に対しては1.5倍程度、感染力が高まっているとされています。

症状の重さはデルタ株は従来のウイルスなどに比べて、入院するリスクが2.08倍、ICUが必要になるリスクが3.34倍、死亡するリスクが2.32倍になっていたとしています。

(5)オミクロン株:

2021年11月に南アフリカから報告された新しい変異ウイルスについて、WHOは「オミクロン株」と名付けVOCに位置づけました。

オミクロン株は、ウイルスの表面の突起部分で、細胞に侵入する際の足がかりとなる「スパイクたんぱく質」に26から32か所の変異があり、このほかにも遺伝子の一部が欠損するなどしているということです。
「スパイクたんぱく質」はヒトの細胞に入り込む際に最初に結合する部分で、ワクチンによる抗体が目印としています。

オミクロン株は他株より感染しやすい理由は、ウイルスが侵入する能力に関しては、オミクロン株のウイルス表面のスパイク蛋白は細胞表面のACE2への親和性が高く、細胞へ侵入しやすいと考えられています。また実際にオミクロン株がデルタ株より速く感染拡大しており、新規感染の中でオミクロンが優位を占める国も多くなっています。

オミクロンは気管支内で、デルタ株や通常株と比べて速く増殖するのと対照的に、肺内での増殖速度は相対的に非常に遅いと言われています。実際に肺炎が起きにくいので、重症化しやすいかは、まだ明らかになっていません。(2022年2月現在)しかしながら安易に「オミクロン株は重症化しないから感染しても問題ない」と考えるのは危険です。

国立感染症研究所では、オミクロン株は、これまでよりも感染力が高まること、ワクチンの効果の著しい低下、抗体の攻撃を逃れたり、感染力が強くなったりしているおそれがあるとしています。また再感染のリスクの増加なども強く懸念されるとしています。
ほかの変異ウイルスに感染した経験があっても、再感染するリスクが高まるおそれがあるとされます。

4-新型コロナウイルスの症状

症状は通常、ウイルスに感染して4、5日後に現れますが、人によっては長ければ2週間たってから症状が出ることもあるようです。一方で、まったく症状が出ない人もいます。

  1. ①鼻・口腔・眼の症状:味覚・嗅覚症状、たまに眼の充血または炎症
  2. ②呼吸器症状:息切れ・咳や痰・胸痛
  3. ③消化器症状:下痢・腹痛
  4. ④循環器症状:胸痛・動悸
  5. ⑤腎臓症状:腎機能障害
  6. ⑥皮膚症状:脱毛・発疹・手足の指の変色・血栓症
  7. ⑦全身症状:倦怠感・関節痛・しびれ・筋肉痛・発熱
  8. ⑧精神・神経系症状:下の概念図をご参照

精神·神経系の症状に関する概念図:

複数の機能部位(臓器)に関連する症状である場合が多い

新型コロナウイルス感染症の後遺症

コロナ後遺症の定義は、英国のNational Institute for Health and Care Excellenceは症状の持続期間によってAcute COVID-19: 発症から4週間以内、米国疾病予防センター(CDC)は、4週間以上続く症状をpost-COVID Conditionsと呼ぶことを提案しています。症状の発症から4週間を超えると複製能力のあるウイルスが分離されることはないといわれているからです。

コロナの重症化リスクの高いのは男性で肥満傾向のある高齢者ですが、嗅覚、味覚障害のリスクなどの後遺症に関しては、比較的重症化リスクが低いとされている若年者、やせ型の人に出やすいことが示され、生活の質を著しく低下させる可能性があります。診断後6ヵ月たってからでも疲労感・倦怠感(21%)・息苦しさ(13%)・睡眠障害や思考力の低下(11%)・脱毛(10%)・味覚障害(9%)が認められることがわかっています。また、男性と比較して女性ほど脱毛(約3倍)、倦怠感(約2倍)、嗅覚障害(約1.9倍)、味覚障害(約1.6倍)の症状が出現しやすいこともわかりました。

5-新型コロナウイルスの検査

1)PCR検査とは

PCR検査とは、正式名称「ポリメラーゼ連鎖反応」(Polymerase Chain Reaction)の略で、ウイルス等の遺伝子(DNA)を増幅させて検出する技術です。

DNAは正確にはデオキシリボ核酸(deoxyribonucleic acid)といい、デオキシリボースという糖と、リン酸、そして塩基という三つの成分で構成される非常に長い鎖のような高分子です。さらにDNAに使われる塩基にはアデニン(A)チミン(T)シトシン(C)グアニン(G)という4種類があり、このA-T-C-Gの並び方で遺伝子が決定されます。

具体的に言いますと、まず目的の遺伝子を抽出します。
遺伝子は通常二重らせん構造していますが、遺伝子に熱を加えると2本鎖のDNAから1本鎖のDNAに分離することができます。この1本鎖になったDNAにDNA合成酵素(DNAポリメラーゼ)を使って、冷やすと片側のDNAを合成していき元の2本鎖のDNAを作っていきます。つまり1つだった遺伝子が2つに増えた事になります。

これを繰り返していけば、ネズミ講のように同じDNAが増えていくということです。増えたDNAに標識をつけておき視覚的にわかりやすくして検出します。

2)コロナウイルスにおける検査方法の比較

6-新型コロナウイルスの予防接種と治療

(ワクチンによる予防接種)

現時点で国内で承認されているのはファイザー(ビオンテック社)及びモデルナ社が開発したmRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンと、アストラゼネカ社が開発したウイルスベクターワクチンの3つですが、現時点で日本で実際に接種が行われているのはmRNAワクチンのみです。(2022年2月現在)

mRNAというタンパク質を生成のための情報を運ぶ設計図が、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のスパイク蛋白、(ウイルス表面のトゲトゲした突起の部分)を作る指示を伝える役割を果たしています。

ワクチンが接種されると、mRNAは注射部位近くの細胞に取り込まれ、細胞内のリボソームという器官がmRNAの情報を読み込み、スパイク蛋白を作ります。スパイク蛋白はマクロファージの表面に現れると、このスパイク蛋白に対する抗体が作られたり、T細胞を介した免疫が誘導されることで、新型コロナウイルスに対する免疫を持つことができます。

(抗ウイルス薬の対象と開始のタイミング)

COVID-19では、発症後数日はウイルス増殖が、そして発症後7日前後からは宿主免疫による炎症反応が主病態であると考えられています。したがって、発症早期には抗ウイルス薬又 は抗体薬、そして徐々に悪化のみられる発症7日前後以降の中等症・重症の病態では抗炎症 薬の投与が重要となります。ここでの重症度は、軽症は酸素投与が必要のない状態、中等症は 酸素飽和度94%(室内気)未満又は酸素投与が必要な状態、重症は人工呼吸管理やECMO(体 外式膜型人工肺)を要する状態を指します。

1)新型コロナウイルスの治療薬

新型コロナウイルスの治療薬として様々な治療薬が開発されています。2022年1月までに承認された薬を役割に応じて分けると以下の3種類です。

①ウイルスの侵入を防ぐ薬(中和抗体薬):

カシリビマブ/イムデビマブ(ロナプリーブ®)
ソトロビマブ(ゼビュディ®)

上記の2つの中和抗体薬は、ウイルス表面に結合し、ウイルスの侵入を阻止します。
標的部位に変異があると結合しにくくなってしまいます。
残念ながら、オミクロン株に対しては中和(結合)しにくく、効果が落ちるため治療には推奨されていません。

②ウイルスの増殖を抑える薬:

モルヌピラビル(ラゲブリオ®)
レムデシビル(ベクルリー®)

③ウイルス過剰な免疫反応や炎症を抑える薬:

デキサメサゾン
バリシチニブ

②③は、オミクロン感染に対する治療にも効果が期待できます。

►COVID-19の重症度と治療薬の選択

2)新型コロナ後遺症に対する遠絡療法の効果

下図で赤字の症状は現時点(2022年2月)で、当院で効果を確認ができた症状です。

①神経系:自律神経失調症や認知機能低下ブレインフォグ
(脳の霧)への効果

新型コロナウイルスの病態の一つ、脳への血流減少による脳の機能低下が起こっている可能性があるという報告が増えています。

[報告1]国立精神・神経医療研究センター神経研究所特任研究部長の山村隆氏は、新型コロナウイルスに感染すると、コロナウイルスに反応する抗体の他に、「自己抗体」も作られ、その中には脳神経系に作用するものがあり、それが引き金になって、「自律神経の異常」、「脳血流の低下」などを起こすことを指摘しています。

[報告2]医学誌NatureにおいてもCOVID and brainの論文に、コロナウイルスは、特定の脳細胞を直接攻撃したり、脳組織への血流を減らしたり、脳細胞に害を及ぼし得る自己抗体の産生を引き起こしたりするという報告がされています。

[報告3]ロンドン大学ユニバーシティカレッジ(英国)の神経科学者David Attwellの研究チームが、ハムスターの脳の切片において、SARS-CoV-2が周皮細胞の受容体の機能を阻害し、脳組織の毛細血管を収縮させることをプレプリント論文で発表しました。これがCOVID-19の後遺症(long COVID)の原因の一部となっている可能性も否定できません。

[報告4]エール大学医学部岩崎明子教授は、新型コロナウイルスは脳の神経細胞に感染を起こすと、感染した細胞自体は殺さずに、ウイルスを増やすために生かしているが、その周りの神経細胞が、酸素を奪い取られて酸欠のために急激にダメージを起こしているという研究結果を発表しました。

ブレインフォグ(脳の霧)

新型コロナウイルス後遺症のひとつに、ブレインフォグによる日常生活への支障が挙げられます。ブレインフォグとは「脳の霧」という意味です。頭の中に霧がかかったような状態になり、思考力の低下、集中力の低下、物忘れ、疲労、頭がかすむなどの症状がでます。遠絡医学では、ブレインフォグは視床、視床下部、橋、脳幹、扁桃体、大脳辺縁系、大脳皮質などから出てくる広範囲の症状と考え、脳のライフフローの障害が影響していると考えています。遠絡療法にて頸から脳にかけてのライフフローを調節し、脳の血液、髄液、間質液などの循環が改善することで、ブレインフォグ及び関連症状が軽快した症例を多く経験しています。

遠絡医学では、人間の身体には、血液、リンパ液、髄液、ホルモン、間質液、組織液、イオン、神経伝達など現在解明されているものと、エネルギーなど未解明なものを含む「流れ」があるとして、生体の流れ(ライフフロー)」と呼んでいます。東洋医学でいうところの「経絡」(「気」「血」「水」の流れ)と近い概念です。

痛み、しびれ、体の不調があるのに、MRIやCT,血液検査など検査をしても、異常がみつからない。このようなケースのほとんどは、「生体の流れ」(ライフフロー)がスムーズに流れていないことによって組織の働きが障害されて発症している機能性疾患です。

新型コロナ後遺症も、感染の影響で脳や末梢神経周辺のライフフローの滞りがおこり、機能的な問題を起こしていると捉えています。遠絡療法によりライフフローを改善することが重要です。

遠絡療法によりブレインフォグ(脳の霧)を改善する

②筋・骨格系:関節痛、筋肉痛、体のあちこちの痛みアトラスから脊髄を中心とした遠絡治療による効果

アトラス(頚椎1番)は、解剖学的に脊髄と延髄の境目にあり、アトラスから上の延髄、橋、間脳には、脳神経の核が集中しています。また、のどの上奥にある上咽頭とも近接しています。

コロナウイルスによる上咽頭の炎症がアトラスに波及すると、ライフフロー(血液、リンパ液、神経伝達物質、ホルモンなどの流れすべて)が遮断され、アトラスより上の脳神経、間脳、基底核、辺縁系の症状、アトラスより下の脊髄に微細な炎症が波及することによる中枢性の痛み、痺れの症状が出現すると考えています。

もともと遠絡医学では、体に表れる様々な症状の大元にアトラス部位の炎症が強く関係していると考え、アトラスの治療を重要視しています。

アトラスのやや上方には、延髄背側網様体亜核(広範囲侵害抑制起始核)や中脳水道中心灰質(下行性疼痛抑制系起始核)があり、これらは、とくに体の疼痛抑制機能にとって重要な部位といわれています。

アトラスの治療によって、それらの部位のライフフローが改善することで、疼痛抑制機能にも良い影響を与えると考えます。

脳内鎮痛の中心的な部位は中脳中心灰白質(PAG)で、下行性疼痛抑制系の起始核としての役割を持っています。PAGそのものは視床下部や扁桃体、前頭皮質、島皮質の上位の影響を受けながら、鎮痛系が作動します。

パリ神経生理学者ダニエル・ル・バースらはラットの頬に存在する痛みは、全身のどこに痛み刺激を加えても抑えることができることを報告しました。広汎性侵害抑制調節(DNIC)の機序には、延髄の背側網様亜核からのネガティブフィードバック機構が関与していると報告されています。

③半導体レーザー光の照射による効果

遠絡療法による①②の治療(脳やアトラスの治療)において、当院では半導体レーザー光を、鼻の下、顎、のど、頸などのよる治療ポイントに照射します。遠絡療法では、ツボでいうところの齦交(督脈)、承漿(任脈)、廉泉(アトラス、任脈)、天突(c-spine, 任脈)鳩尾(きゅうび・任脈)などのポイントを刺激することで、督脈(脳や脊髄をコントロールしている流れ)を治療し、ライフフローを改善できると考えています。同時に、この部位にレーザー光を照射することは、痛み抑制の要、延髄背側亜核と中脳水道中心灰白質の両者に刺激を与え、強い鎮痛効果を得ていると考えています。

半導体レーザー治療の作用機序

半導体レーザー治療の作用機序として、オピオイド物質の放出、下行性疼痛抑制系などの中枢性の鎮痛機構が賦活され、血流の改善、過緊張状態の交感神経活動が正常化する、免疫力の増強、抗炎症作用、組織修復作用などがあります。

レーザーを照射することで脊髄後角を経由して延髄大縫線核や中脳水道周囲灰白質、橋青斑核などを興奮させ、下行性疼痛抑制系などの中枢性の鎮痛機構が賦活されることが知られています。免疫細胞によりオピオイド物質が放出されることで、末梢性の鎮痛を引き起こすことが知られています。星状神経節に照射すると、過緊張状態の交感神経活動が正常化することが報告されていることから、不安や恐怖心を抱いている慢性痛患者や不眠などの自律神経症状を持つ患者など、過緊張状態の交感神経活動に有効な治療になるものと考えられています。

④その他の新型コロナ後遺症状に対して

[嗅覚障害]

新型コロナウイルスによる嗅覚障害は、鼻粘膜の浮腫、分泌物の増加による気導性嗅覚障害あるいは嗅神経の周囲の細胞の炎症による機能低下が考えられます。

[味覚障害]

味覚障害を訴える患者は味覚検査で正常値を示すことが多かったことから、COVID-19罹患後の味覚障害の多くは、嗅覚障害による風味障害を発生しているものと思われます。

[脱毛症]

脱毛については、ウイルスに感染し発熱することによる体力消耗などの肉体的ストレスや精神的なストレスに伴う「休止期脱毛症」と言われています。休止期脱毛症は、外傷や手術、高熱を伴う感染症など体に急激な変化が伴った場合に、成長サイクルの毛髪が大量に休止期に移行することで起こる脱毛症です。通常、コロナ感染後2〜3ヵ月後に発生し、半年程度で回復します。

上記症状については、遠絡療法により、嗅神経周囲や頭部表皮のライフフローを改善することにより十分改善する可能性はあると考えています。

作用機序はホームページの「遠絡療法」をご参照ください。

3)ドイツ波動医学(バイオレゾナンス)による
新型コロナ後遺症への効果

「バイオレゾナンス」はドイツの振動医学からなる理論で、振動(共振)を利用した健康法です。バイオ(生体の)+レゾナンス(共鳴)ということであり、生体の共鳴反応をみています。人間の身体組織それぞれの持つ固有の周波数を整え、 自然治癒力を引き出して体の健康を整えていきます。当院では、身体の治癒力がどこで何によって障害されているのかを、バイオレゾナンスによる手法で診察し対応策を指導します。

物質は、分子のレベルまでみると微細に振動しています。物質にはそれぞれ固有の周波数が決まっています。人間の臓器にも、それぞれ周波数を持っていて、健康なときは本来の周波数を出しますが、不調になっているときは本来の周波数を出していません。周波数を調べることで、不調な臓器を特定し、さらにその原因まで特定していきます。

具体的には、新型コロナウイルスによってダメージを受けた組織には、さらに有害ミネラル(体の害となる重金属)やほかのウイルスや菌、カビ毒などが影響しやすいと考え、それらの問題がないかを調べ漢方薬の処方などで対応します。また、地層断層の影響・電磁波などが症状に影響していないかを調べ、それらに対する対策を指導いたします。

4)遠絡療法による症例報告

[症例1]新型コロナワクチン副反応(頭痛、だるさ)40才 女性

[主訴]

倦怠感、頭痛

[既往症]

10才 生理痛、腰痛が時々あった
28才 子宮上皮内がん、円錐切除
39才 2021年9月26日 1回目コロナワクチン注射(モデルナ製)
倦怠感と頭痛 4日間継続
10月4日 熱37.5° 心拍数上昇 吐気 皮膚発疹
A大学受診、ワクチンのアレルギー反応と診断され、薬処方
10月30日 他院でコロナの既往がないか検査したが陰性でした
熱が上がったり、下がったり、倦怠感、頭痛が取れない
11月30日 微熱、頭痛、倦怠感、手足の脱力感、筋肉痛にて当院受診

[当院での診察所見]

以下、訴えのあった症状の原因中枢から分類を列記します。

  • 視床下部の症状:
    眼が重い、手が冷える、足が冷える、怒りやすい、気分が落ち込みやすい、
    不安、眠れない、疲れやすい
  • 下垂体の症状:アレルギー、生理痛
  • 迷走神経の症状:下痢、便秘、右腹痛
  • 内耳神経の症状:めまい
  • 顔面神経の症状:目が乾燥する、口が乾く
  • 三叉神経、副神経の症状:頭痛
  • 腰部脊椎レベルの症状:腰痛、臀部痛、下腿部痛
  • 胸椎レベルの症状:背部痛
[遠絡療法による治療結果]

ブレインフォグ(brain fog)の症状(眼が重い、手が冷える、足が冷える、怒りやすい、気分が落ち込みやすい、不安、眠れない、疲れやすい)については、治療直後にご本人から、「目がスッキリしました、頭痛が消えて、気分がすっきりしました。手足も暖かくなりました。」など改善を伺える感想がありました。

腰痛、臀部痛、下腿部痛についても、遠絡療法による治療後、腰痛はNRS8→4、下腿部痛NRS4→0と改善がありました。(NRSは耐え難い痛みを10とした場合の痛みの主観的な度合いを数字で評価するものです)

背部痛は、胸骨上にある治療点に施術を行い、背部痛NRS8→4になりました

右腹痛:チクチクような痛みはNRS5→0になりました

[治療経過]

来院時は、全身のだるさ、腰痛、臀部痛があるため、歩行はほどんどできませんでした。治療3回経過後、腰痛が改善し、頭痛も軽快、歩行可能となり、現在1日歩行量3000歩、微熱、だるさは消失、夜が眠れるようになりました。

[症例2]新型コロナワクチン副反応(全身の痛み、しびれ、倦怠感)
CRPS(複合性局所疼痛症候群)の合併 15才、女性
FM(線維性筋痛症)

[主訴]

全身の痛み、しびれ、倦怠感

[既往症]

小6 血管迷走神経反射によるめまい、吐き気
13才 生理痛、頭痛
14才 2021年10月 1回目コロナワクチン注射(ファイザー製)
打った直後から左腕の痛み、しびれ、腕を動かせなくなった
A市民病院、B大学病院にて諸検査、特に異常なし
10月末、右手握力急低下(25Kg→7Kg)、筆記困難
C大学にてMRI検査、異常なし,CRPS疑いの診断
15才 認知行動療法開始するも効果なく、症状拡大
2021年12月28日 全身の痛み、しびれ、右腕の激痛、運動制限
倦怠感にて当院受診、受診時車椅子使用

[当院での診察所見]

以下、訴えのあった症状の原因中枢から分類を列記します。

  • 視床下部の症状:
    手が冷える、手がしびれる、足が冷える、足が痺れる、怒りやすい、気分が落ち込みやすい、イライラすることが多い不安、眠れない、疲れやすい
  • 下垂体の症状:
    アレルギー、花粉症、生理痛、生理不順
  • 嗅神経の症状:匂いは感じにくい
  • 顔面神経の症状:目が乾燥する
  • 内耳神経:めまい
  • 舌咽神経の症状:辛いものが苦手
  • 迷走神経の症状:下痢、便秘、腹部胃腸症状
(痛みについて)
  • 左上肢;激痛、指の屈伸できず、腕の屈伸できず
  • 右上肢;痛み、しびれ
  • 両肩関節:痛み、肩から頸にかけての痛み
  • 腰部脊椎の症状:腰痛、下腿部痛、足裏の痛み
  • 線維筋痛症の診断基準部位のうち14か所に圧痛(18か所中11か所以上に圧痛で確定)
  • 左腕の注射部位より、左上肢全体の激痛、しびれ、腕、指とも運動制限あり、CRPS(複合性局所疼痛症候群)の診断基準に相当
    (痛み、痺れの部位及び強さは下図に示しております)
[遠絡療法による治療]

この症例は、診察所見にて、胸椎にT2/3からT9/10の強圧痛、腰椎 L2/3から仙椎S3/4にも強圧痛をみとめ、脊髄の中枢性感作を起こしていると判断しました。左上腕への注射で、左上肢全体のズキズキする激痛、運動制限、軽度のむくみがありました。さらに、右上肢にも痛み、しびれを波及していました。CRPS(複合性局所疼痛症候群)の診断基準に十分当てはまり、さらに線維性筋痛症(FM)の診断基準にも当てはまる状況でした。

中枢性感作による全身の痛みが出ていると判断し、視床、視床下部、、橋、延髄、12脳神経、脊髄を中心とした中枢性治療をしました。

中枢に対する遠絡治療を行う際に、当院では半導体レーザーを使用します。半導体レーザーの作用機序はオピオイド物質の放出、下行性疼痛抑制系などの中枢性の鎮痛機構が賦活され、血流の改善、過緊張状態の交感神経活動が正常化する、免疫力の増強、抗炎症作用、組織修復作用などがあります。当院はSheepやトリンプルDを使用し、経絡の齦交(督脈)、承漿(任脈)、廉泉(アトラス、任脈)、天突(c-spine, 任脈)鳩尾などに照射を行います。遠絡のアトラスの治療は痛み抑制の要、延髄背側亜核と中脳水道中心灰白質の両者に刺激を与えることによって強い鎮痛効果を得ていると考えています。

更に中枢治療から末梢神経周囲の流れを改善するため、押棒を使用した遠絡の手技治療を実施します。遠絡療法の技法より連接、相輔、補強法、相克法、牽引瀉法、増流処置など6つの治療法の組み合わせて、詰りや滞りのあるライフフローを開通、回復、促進し治療を行います。

[治療後経過]

新幹線を利用して遠方からの来院ということもあり、週一回程度の継続治療で、現在3回実施医しました。現段階では、頭がぽーっとする、集中力低下などのブレインフォグ(brain fog)の症状に改善が見られます。腰痛、肩関節の痛み、生理痛は、治療中に消失するなど良い反応が見られています。嗅覚障害も落ち着き、目の乾燥する感じが改善し、もともと好きだった歌唱を再開できるほど気持ちが明るくなっているとのこと。左腕の可動域にもわずかずつ改善が見られ、特にいままで全く動かせなかった指も屈曲進展がゆっくり出来るようになりました。左上肢全体の痛みもNRS8(かなり痛い)→4(少し痛い)に軽快しています。

医療従事者向け

1-新型コロナウイルス変異について

①ウイルスの特徴と変異の理由

ウイルスは、蛋白質の外殻、エンベロープ表面にはSpike(S)蛋白、Envelope(E)蛋白、Membrane(M)蛋白が配置されています。内部に遺伝子(DNA、RNA)を持っただけの単純な構造の微生物です。

細菌のように栄養を摂取してエネルギーを生産するような生命活動は行いません。たとえ栄養と水があったとしても、ウイルス単独では生存できません。自分自身で増殖する能力が無く、生きた細胞の中でしか増殖できませんので、他の生物を利用して自己を複製することでのみ増殖します。

その過程で「変異」を繰り返し、子孫を維持するために、より環境に適応しやすいよう姿を変えていきます。

②ウイルス変異の過程

①ウイルス表面にある、とげ状の「スパイクたんぱく質」が、ヒトの細胞表面で受け手となる受容体たんぱく質(アンジオテンシン変換酵素2=ACE2)に結合して細胞内へ侵入します。

②細胞内では、RNAの情報に従って、ウイルスの素材となるたんぱく質を翻訳します。一方、RNAは大量に複製され、たんぱく質とともに組み立て・成熟が進んでいきます。RNA複製の際に一定の確率でミスが生じ、RNAを構成する塩基の配列が変わることがあります。「変異」という現象が自然に発生するのであります。。一般的にウイルスは増殖・流行を繰り返す中で少しずつ変異していくものであり、新型コロナウイル スも約2週間で一か所程度の速度で変異していると考えられています。

2-新型コロナウイルスの病態メカニズム

後遺症が起きる理由については未解明な部分が多いとされますが、複合的な要因が絡み合っていると考えられています。

1)コロナウイルスによる臓器のダメージ

新型コロナウイルスは、ヒトのアンジオテンシン変換酵素2 (angiotension converting enzyme2,ACE2)受容体というたんぱく質に結合し細胞内に侵入する性質があります。ACE2受容体は肺胞上皮細胞をはじめ、鼻粘膜や舌口腔粘膜、心筋細胞、近位尿細管細胞、脳、食道上皮細胞、血管平滑筋細胞、腸などに存在します。このため、肺の細胞内でコロナウイルスが増殖し細胞が障害されると、肺機能が低下し咳や息切れなどの呼吸器症状が出現します。鼻や舌の粘膜の細胞が障害されると、嗅覚や味覚障害が生じることになります。心臓で細胞障害の反応の1つとされる炎症が起きると心筋炎や動悸に、さらに脳内で炎症が起きるとブレイン・フォグ(集中力や記憶力の低下など)につながることが考えられています。

2)サイトカインストームという過剰な炎症を引き起こす

サイトカインとは、感染症などが契機となり、炎症細胞(マクロファージ・リンパ球など)・上皮細胞・血管内皮細胞などから分泌される蛋白質です。サイトカインは免疫応答を調節する生理活性物質であり、ウイルス・細菌などの微生物に対する生体防御を担っています。

新型コロナウイルスに感染すると、感染の量が多くなると、炎症の量も多くなり、サイトカインも大量に放出されます。それをサイトカインストーム(サイトカインの稲妻、サイトカインの免疫暴走)と呼んでいるのです。SARS-CoV-2感染の約3%のケースで、免疫系の過剰反応によるサイトカインストームが誘導されます。

2020年医学雑誌Lancetの報告では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)において、一部の患者では致死的な呼吸不全に陥り、多臓器疾患が観察されます。その病態メカニズムとして、サイトカインストームとよばれる病態が関与している可能性が指摘されています。

サイトカインには様々な種類がありますが、このうちTNF-alpha・IL-6などは強い炎症応答を引き起こすことが知られており、炎症性サイトカインと呼ばれています。新型コロナウイルス感染症の重症例では、IL-6・IL-10・TNF-alphaなどのサイトカインの血中濃度の上昇、Tリンパ球の細胞数低下や機能異常がみられたとの報告があります。

その他に、感染症などによって、大量に産生された炎症性サイトカインが血液中に放出されると、過剰な炎症反応が惹き起こされ、様々な臓器に致命的な傷害を生じることがあります。例えば、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、播種性血管内凝固症候群(DIC)、急性循環不全(ショック)、さらには多臓器不全に陥る原因となります。

3)新型ウイルス感染後の免疫調節不全を引き起こす

新型コロナ感染で、コロナウイルスに反応する抗体の他に、自己抗体も作られてしまい、その中には脳神経系に作用するものがあります。それが引き金になって、自律神経の異常、脳血流の低下などを起こすのです。自己抗体が体内に残ると、長期にわたって影響が続くとみられます。

上記の脳の「血流低下」という表現ですが、遠絡的に考えると、脳の「血流低下」のみではなく、生体に流れる12経絡の「ライフフロー」(血液、リンパ液、神経伝達、内分泌、髄液、組織液など)とも低下していると考えられます。

新型コロナ感染で、コロナウイルスに反応する抗体の他に、自己抗体も作られてしまい、その中には脳神経系に作用するものがあります。それが引き金になって、自律神経の異常、脳血流の低下などを起こすのです。自己抗体が体内に残ると、長期にわたって影響が続くとみられます。

上記の脳の「血流低下」という表現ですが、遠絡的に考えると、脳の「血流低下」のみではなく、生体に流れる12経絡の「ライフフロー」(血液、リンパ液、神経伝達、内分泌、髄液、組織液など)とも低下していると考えられます。

4)血液脳関門の機能低下及びグリア細胞への障害

脳内の血管は、血管内皮細胞やアストロサイトなどから成り立つ、血液脳関門と呼ばれる特殊な仕組みをしており、全身を巡る循環系と中枢神経系の環境を隔てるバリア、として機能しています。

ドイツ神経変性疾患センター(ベルリン)の神経免疫学者Harald Prüssは神経学的な症状や損傷の一部は、SARS-CoV-2感染後に体の免疫系が過剰に応答したり誤作動したりした結果であることを指摘し、一部の人々では、感染に応答した免疫系が、自分の組織を攻撃する「自己抗体」を意図せずに作ってしまう場合があります。例えば視神経脊髄炎は、自己抗体が視神経や中枢神経系を傷害し、患者に視力喪失や四肢の虚弱といった症状を引き起こす長期的な疾患であります。Prüssは、自己抗体が血液脳関門を通過して記憶障害や精神疾患などの神経障害に寄与している可能性があります。ヒトから単離したSARS-CoV-2に対する抗体の1つが、ハムスターを感染や肺損傷から保護することを見いだしました。更に神経学的症状を呈する重症のCOVID-19患者11人から採取した血液と脳脊髄液を調べ、全ての患者でニューロンに結合できる自己抗体が産生されていることを見いだし論文で発表しました。

エール大学医学部岩崎明子教授は、新型コロナウイルスは脳の神経細胞に感染を起こすと、感染した細胞自体は殺さずに、ウイルスを増やすために生かしている、その周りの神経細胞というのが、酸素を奪い取られて酸欠のために急激に死んでいって、それでダメージを起こしているという結果を発表しました。

カリフォルニア大学サンフランシスコ校(米国)の神経内科医Arnold Kriegsteinは、アストロサイトは、ニューロンに栄養を供給してその機能を維持するなど、脳が正常に機能するのを助けていますが、アストロサイトが他の脳細胞よりSARS-CoV-2に感染しやすいことをプレプリント論文で2021年1月に報告しました。

3-新型コロナウイルスの後遺症の症状解析

1)強い疲労感・倦怠感

免疫細胞の「T細胞」には複数の種類があり、ウイルスに感染した細胞を排除したり、免疫の暴走を抑えたりする役割などを担っています。

京都大学免疫細胞生物学上野英樹教授が新型コロナウイルスに感染し、強い倦怠感のある患者の血液の「T細胞」を解析したところ、そのT細胞が、健康な細胞に対しても過剰に攻撃を行っている可能性があり、さらに、その攻撃を防ごうと、免疫の反応を抑制する細胞が激しく働きます。つまりウイルスを排除する免疫細胞とその働きを抑える免疫細胞の両方が多いと指摘され、2つの細胞が同時に多くなることで、免疫の乱れによる免疫の調整ができずに倦怠感につながるとみられています。

この細胞がないとなかなかウイルス排除が進まないのですが、こういう患者さんは若干強く出すぎている可能性があります。免疫の方は何とか抑えようとしているが、車で言うとアクセルと一緒にブレーキを踏んでいる様な状態でうまく体の免疫応答を調整できていないと考えています。

他に、新型コロナウイルス感染の患者さんは、異常な疲労感は、サイトカイン(TGF-𝛃及びインターフェロン)の産生異常といった免疫機能障害によって引き起こされると報告される文献もあります。

2)息苦しさ

咳や息切れといった呼吸器症状は、新型コロナウイルス感染症の中でも最も一般的な後遺症の1つです。海外の報告では呼吸困難は診断が60日~100日後でも42~66%に起こることが示唆されています。

新型コロナウイルスは、ヒトのアンジオテンシン変換酵素(ACE)2受容体というたんぱく質に結合し細胞内に侵入する性質があります。ACE2受容体が肺胞上皮細胞や内皮細胞でコロナウイルスが増殖し細胞が障害され、肺の細胞が炎症で傷ついて硬くなる“線維化”がおきており、肺機能が低下し息苦しさ、咳、痰や息切れなどの呼吸器症状が出現します。

多くの新型コロナウイルスに感染し、息切れの症状のある患者のうち、胸部CTスキャンを施行すると、画像所見では、肺のすりガラス影、索状影、肺の線維化、炎症性浸潤、血栓症など肺炎による変化が見られること。なおこれらの患者の肺機能検査を受けた結果、肺の機能障害も認められました。

3)脱毛

脱毛が起こる理由について、英国脱毛症研究委員会のメッセンジャー教授は「体への物理的なストレスは休止期脱毛症と呼ばれる脱毛を引き起こす可能性があります。新型コロナだけでなくスペイン風邪では脱毛はよくある症状でした」と語ります。

「休止期脱毛症」とは、通常は髪の毛には成長期が有り、成長が止まると退行期となり、休止期に入ると脱毛となります。このサイクルを2~6年続け、それぞれの毛でサイクルが異なるため一斉には抜けることはない。一方、休止期脱毛症は成長期の後に退行期を挟まずすぐに休止期に入ってしまい抜けます。発熱のある感染症・大きな外傷・出血・手術・急速なダイエット・出産などで起こることもあります。

新型コロナウイルスに感染すると、精神的なストレスとなり、ある程度体力を消耗する(発熱する)感染症の後、髪が抜けやすくなることはよくあります。これらは休止期脱毛症と呼ばれ、成長期毛が通常を超える範囲で多量に抜けるのが特徴です。さらにコロナウイルスに罹患すると10日以上はどこにも行けないということになります。人間にとって動けないことはストレスなので、ストレスから脱毛に至るでしょう。他に新型コロナウイルスそのものが毛根にダメージを与えるという事も考えられます。

4)発熱

発熱は脳の指令によって引き起こされる能動的体温上昇です。新型コロナウイルスが体内に侵入すると、マクロファージ系の細胞に存在するToll様受容体によって認識されます。そうすると、インターロイキンIL‒1βやIL‒6などの炎症性サイトカインが放出されます。炎症性サイトカインはC反応性蛋白(C‒reactive protein: CRP)などの急性期蛋白の産生を促します。

末梢組織で産生された炎症性サイトカインは脳血管内皮細胞のサイトカイン受容体に作用すると、発熱のメディエーターであるPGE2(プロスタグランディンE2)の産生を促す。PGE2が体温調節の中枢に作用すると、骨格筋でのふるえ熱産生、褐色脂肪組織での非ふるえ熱産生などの熱産生反応が亢進します。

5)筋肉痛・関節痛

炎症反応が強くなると、CRPレベルが上昇する。骨格筋に作用すると蛋白質分解反応が亢進し、筋肉がやせたり筋肉痛が生じます。炎症局所ではポリモーダル受容器を興奮させて痛覚過敏を引き起こす。
新型コロナウイルスの感染で、全身に炎症があると想定すると、Brain fogによる視床の機能低下、脊髄後角の中枢性感作を起こした場合は、痛みが長期化します。

6)嗅覚障害

嗅覚障害は匂いが鼻腔内の嗅神経まで到達しないために生じる気導性嗅覚障害、嗅神経自体が障害を受けて生じる嗅神経性嗅覚障害、頭蓋内の嗅球よりも中枢の障害による中枢性嗅覚障害に分類されます。COVID-19罹患後の嗅覚障害は早期に回復する症例が多く、MRIを用いた研究により、発症直後に認められた嗅裂の閉鎖所見が1ヵ月後にほどんどの症例で消失していたことから、早期に改善する嗅覚障害は、鼻粘膜の浮腫、分泌物の増加による気導性嗅覚障害が考えられます。嗅覚障害の症状はコロナウイルス感染症の治癒に伴い、大半の人で早急に消失します。

つまり、新型コロナウイルスによる嗅覚・味覚障害は、神経細胞ではなく、ACE2受容体を発現している嗅上皮支持細胞、繊毛細胞、ボウマン腺細胞、水平基底細胞、嗅球周皮細胞などがダメージをうけて、嗅神経の周囲の細胞の炎症による機能低下と考えられています。そのためウイルス感染が治まるとともに嗅覚障害も回復するのです。

一方、嗅覚障害が遷延する患者のほどんどが異嗅症*を訴えることが多く、嗅覚障害の様態が感冒後嗅覚障害と類似していることから、嗅神経性嗅覚障害となっているものと思われます。

*異嗅症:①刺激性異嗅症:嗅いだ匂いが以前と違って感じる(コーヒーの匂いがガソリンの匂いに感じる)、全ての匂いが同じに感じる(食べ物の匂いがすべてマニキュアの匂いに感じる)②自発性異嗅症:匂いを嗅いでいないのに常に匂いを感じる、突然に鼻の中や頭に匂いが現る 等。

7)味覚障害

味覚障害、口腔内乾燥症や真菌感染症などの口腔内の異常、味細胞や味神経の異常、味覚中枢の異常のほか、血中亜鉛の低下、心因性、嗅覚障害に伴う風味障害などが数多くあり、それぞれが相互に絡んでいることが少なくありません。味覚障害に嗅覚障害を伴う症例が多く、味覚障害で単独で発生する症例の頻度は低かった。また、嗅覚障害を訴える患者の多くが嗅覚検査でも異常低値を示したのに対し、味覚障害を訴える患者は味覚検査で正常値を示すことが多かったことから、COVID-19罹患後の味覚障害の多くは、嗅覚障害による風味障害を発生しているものと思われます。

また、味覚障害に関しては、舌の味覚をつかさどる組織である味蕾や神経がウイルスによるダメージーをうけ、嗅覚周辺の細胞の炎症とともに食品の匂いがわからないことによる風味の障害が機序として想定されます。さらに新型コロナウイルスは唾液ムチンのシアル酸受容体も結合することが報告され、この唾液中のシアル酸の低下が味覚閾値の上昇(味覚低下)に関連しているようです。

発症1ヵ月後の味覚障害の改善率は84%であり、海外の報告ともほぼ一致する。味覚障害、嗅覚障害の症状はコロナウイルス感染症の治癒に伴い、大半の人で早急に消失します。QOLの変化については、食事が楽しめなくなったこと等に嗅覚・味覚障害と強い相関を認めました。

8)血栓形成

新型コロナウイルスと血栓形成については2つのパターンがあると言われております。

①感染初期の段階で新型コロナウイルスが血管を攻撃し血栓を形成:2020年4月20日の英国医学雑誌LANCETに掲載された仮説で、新型コロナウイルスが肺胞上皮細胞や血管内皮細胞のACE2受容体(アンジオテンシン変換酵素2受容体)を通じて血液内に入り、血管を攻撃するのではないかという内容の論文が発表されました。血管を傷付けることで血栓が生まれます。

②大阪市立大学井上正康名誉教授は、「コロナウイルスのスパイクはACE2という血管壁の酵素タンパクに結合し、血管内皮細胞に感染する。更に、ワクチン注射により体内でつくられたスパイクも血管壁のACE2に結合し、内皮細胞のミトコンドリアに影響して細胞を障害する。この細胞障害により血凝固反応が起こる」と指摘しました。

③サイトカインストーム*による血栓形成:大量のサイトカインが発生するサイトカインストームにより血液の凝固異常が起き、発熱や倦怠感、凝固異常が過剰に起こることにより、全身状態の悪化や血栓形成に繋がります。それによって心筋梗塞、肺塞栓、脳梗塞、下肢動脈塞栓が起こる可能性があります。

サイトカインストーム*

ウイルスに感染したり、ワクチンを打ったりすると、抗体ができます。抗体がウイルスと結合すると、これを白血球が取り込んで分解処理します。しかし、突然変異が激しいウイルスの場合、白血球に取り込まれた後に分解されず、細胞の中で爆発的に増殖する現象がおこります。あるいは、スパイクの特定の変異部位に抗体が結合することにより、感染受容体ACE2への結合が増強することがあります。これが抗体依存性感染増強(Antibody-dependent enhancement ADE)です、ADEはサイトカインストーム(免疫システムの暴走)を引き起こす非常に怖い現象です。

9)認知機能障害

ACE2は、脳の扁桃体、大脳皮質、脳幹において強く発現されており、SARS-CoV-2感染により引き起こされる認知機能障害と関連する可能性があります。

アルツハイマーの脳では、アミロイドベータタンパク質が沈着しています。アミロイドベータタンパク質は神経細胞にとって毒性を持つため、特に蓄積したアミロイドベータタンパク質の周囲に活性化したミクログリアがタンパク質を貪食して、炎症性サイトカインの量が増えているといった報告があります。

新型コロナウイルスの患者の脳でも、SARS-CoV-2感染の約3%のケースで、免疫系の過剰反応によるサイトカインストームが誘導され、多臓器疾患が観察されます。その中の一つにサイトカインストームによる脳の炎症が進行し、大脳辺縁系、扁桃体、大脳皮質に炎症が広がると、認知機能障害への進展も大きく関与していると考えられます。

10)ブレインフォグ(brain fog)

ブレインフォグは脳の霧を意味しています。頭の中に霧がかかったような状態になり、思考力の低下、集中力の低下、物忘れ、疲労、頭がかすむなどを呈します。ブレインフォグはME(筋痛性脳脊髄炎)/CFS(慢性疲労症候群)の患者さんにしばしばみられる症状でありますが、新型コロナ後遺症の重要な症状の一つでもあります。

新型コロナウイルス感染症によって引き起こされる症状や、障害を受ける臓器は極めて多岐にわたります。これは、SARS-CoV-2が、細胞に感染する際の入り口のウイルス受容体として使用するACE2(angiotensin-converting enzyme 2)の発現分布と関連することが、最近の報告から明らかとなりました。

米国、Louisiana State Universityの研究者らは、ACE2の発現を、脳内の21個の領域を含む、85のヒトの組織において詳しく解析しました。ACE2はほとんど全ての組織で普遍的に発現されています。呼吸器系では、鼻腔の粘膜上皮細胞、鼻腔にACE2発現が多いことは、新型コロナウイルスの初感染時の病態とウイルス拡散に寄与すると考えられます。他に嗅神経の支持細胞、気管、気管支、肺胞上皮細胞。呼吸器以外のACE2発現は、消化器、小腸上皮細胞、血管内皮細胞、腎尿細管、心血管、精巣、卵巣に高く確認されました。SARS-CoV-2は、ACE2の幅広い発現を利用して、種々の細胞に入り込み、増殖し、その機能を撹乱するものと思われます。

カリフォルニア大学サンフランシスコ校(米国)の神経内科医Arnold Kriegsteinは、「アストロサイトは、ニューロンに栄養を供給してその機能を維持するなど、非常に多くの役割を果たしており、脳が正常に機能するのを助けています」と説明し、同時にSARS-CoV-2が他の脳細胞よりもアストロサイトに選択的に感染することをプレプリント論文で2021年1月に報告しました。

ArnoldKriegsteinは、アストロサイトが感染することで、COVID-19に関連する神経学的症状の中でも特に、倦怠感、うつ、ブレインフォグ(脳の霧)と呼ばれる混乱や物忘れを含む症状を説明できる可能性があると主張しています。彼はさらに「こうした種類の症状は、ニューロンのダメージではなく、何らかの機能障害を反映している可能性があります。これが、アストロサイトの脆弱性と一致しているのではないか」と主張しています。

国立精神・神経医療研究センター神経研究所特任研究部長の山村隆氏は、新型コロナに感染すると、「筋痛性脳脊髄炎・慢性疲労症候群(ME/CFS)」を発症するとして、メカニズムはまだ解明されていませんが、後遺症を訴える患者には、共通する「脳の血流の低下」があるとしています。この脳血流低下の原因は、感染をきっかけに自己抗体が間違って自分の体の細胞を攻撃しているためではないかと考えています。
新型コロナ感染で、コロナウイルスに反応する抗体の他に、自己抗体も作られてしまい、その中には脳神経系に作用するものがあります。それが引き金になって、自律神経の異常、脳血流の低下などを起こすのです。自己抗体が体内に残ると、長期にわたって影響が続くとみられます。

4-新型コロナウイルスの感染から発症まで
遠絡医学からの見解も踏まえて

1)最初は鼻腔、上咽頭に感染

米国Louisiana State Universityの研究者らは、ACE2の発現を、脳内の21個の領域を含む、85のヒトの組織において詳しく解析しました。ACE2はほとんど全ての組織で普遍的に発現されていますが、特に脳幹の橋と延髄、扁桃体、大脳皮質で最も強く発現されています。

専門家によると、SARS-CoV-2が脳に到達する経路の1つとして、嗅粘膜(脳に隣接している鼻腔の粘膜)を通過することが考えられるといいます。SARS-CoV-2は、鼻腔によく見られます。医療従事者がSARS-CoV-2の感染を検査するために鼻腔を綿棒で拭うのはこのためです。鼻腔、鼻粘膜上皮細胞のACE2受容体と結合し、上咽頭に侵入し上咽頭炎を起こします。

2)上咽頭における静脈うっ血・脳脊髄液うっ滞

上咽頭では粘膜下に細静脈叢と毛細リンパ管が存在し、迷走神経求心路の末端神経線維が豊富に分布しています。一方、脊柱管内の静脈叢は、硬膜の間に分布し、脊柱管外の静脈叢と導出静脈を介して連続しています。細菌、ウイルス、粉塵等の外因性アジュバントにより惹起された慢性上咽頭炎の状態では、免疫系のみならず細静脈、毛細リンパ管、迷走神経のすべての機能に異常が生じます。すなわち、静脈うっ血により代謝障害に陥った血管内皮細胞からは炎症性メディエーターが産生・放出され、血管透過性亢進・漏出性出血・滲出液漏出が起こります。一方、活性化リンパ球からは各種炎症性サイトカインが放出されます。

旭川医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科原渕保明教授は、慢性上咽頭炎の症状は上咽頭における静脈うっ血・脳脊髄液うっ滞による脳幹・視床・視床下部の循環障害説を提唱しています。

これらの炎症関連因子による毛細リンパ管拡張作用のため、静脈路やリンパ流路がうっ滞し、粘膜下浮腫へ至ります。その結果、軸椎など脊柱管外椎骨静脈叢の最上部のうっ血が生じ、脳底の静脈叢や海綿静脈洞のうっ血も起こります。そして、それらの静脈洞に流れ込む静脈系を持つ脳幹や、視床・視床下部の循環が障害されると考えられています。加えて、粘膜下に存在する迷走神経を主体とした自律神経線維の受容体は炎症関連因子により持続的刺激状態となり、自律神経過剰刺激症候群等の誘因となると指摘しています。

3)上咽頭炎症から脳幹部の12脳神経へ感染

脳幹部の12脳神経へ感染のメカニズムは、まず鼻から上咽頭へ感染、上咽頭の細胞には免疫に関与するリンパ球が多く含まれています。よって上咽頭そのものが免疫器官の役割を担っていて、上咽頭の近くには血管やリンパ管が豊富に張り巡らされているため、例えば新型コロナウイルスを感染すると炎症が血管やリンパ管を通じて全身へ回りやすいと考えられています。上咽頭炎を起こした場合、上咽頭炎から肺で増えたウイルスが、血管、血液の細胞に感染してそれが脳に感染する。さらに免疫バリアの交通路でACE受容体の多い延髄に感染し、12脳神経へ影響を及ぼすと考えられます。

上咽頭を包むように存在する上咽頭収縮筋は舌咽神経および迷走神経からなる咽頭神経叢からでる運動神経の支配を受けます。一方、上咽頭側壁にある耳管開口部周囲の粘膜下に存在する口蓋帆挙筋、口蓋帆張筋はそれぞれ三叉神経第三枝舌咽、迷走神経により支配されます。咽頭ならびに喉頭の末梢知覚情報は、上喉頭神経および舌咽神経知覚線維を介して孤束核で中継された後、一部は視床、扁桃体、基底核などの皮質下構造と神経回路を形成しながら、皮質眼窩回吻側部に至る。味覚の中継核は顔面神経舌咽神経迷走神経→弧束→弧束核→内側毛帯→視床VPM→大脳皮質味覚野へ行く。迷走神経は体性神経(運動神経と感覚神経)と副交感神経が合わさった自律神経の総元締め役であり、肺、心臓をはじめとして多くの臓器に広く影響をあたえる神経です。

4)アトラスを中心とした病因論の関与

遠絡医学は、アトラス(環椎C1)を中心とした病因論から構築されている。アトラス(環椎C1)から上の延髄、橋、間脳に脳神経が集中し、免疫バリアの上咽頭との交通もあり、新型コロナウイルスに感染して、鼻腔、鼻粘膜上皮細胞のACE2受容体と結合し、上咽頭に侵入し上咽頭炎を起こし、更に免疫バリアの交通路でACE受容体の多い延髄に感染し、延髄と環椎C1の境目アトラスを基として、扁桃体、大脳皮質へウイルスの感染によって炎症性サイトカインを産生し、脳内炎症をおこします。

ACE2は、扁桃体、大脳皮質、脳幹において強く発現されており、SARS-CoV-2感染により引き起こされる認知機能障害と関連するかもしれません。ACE2は、脳幹の橋と延髄で最も強く発現されています。ここは、延髄呼吸中枢を含む領域であり、SARS-CoV-2感染患者に見られる呼吸器系の障害を引き起こします。

新型コロナウイルスの発症機序を遠絡医学のライフフローの鬱滞による発症という観点から、遠絡統合医学会の理事長の渡辺実千雄医師は次のように考察しています。

静脈については、咽頭後壁、側壁に咽頭静脈叢をつくり、上咽頭付近では翼突筋静脈叢に交通し、内頸静脈に注ぎます。アトラスの炎症によって、両側の内頚静脈が慢性的にわずかながらも圧迫を受けると上流のガレン静脈やさらにその上流でうっ血が生じ、両側視床や基底核で灌流障害が生じ、代謝障害に陥った血管内皮細胞からは炎症性メディエーターが産生・放出され、毛細血管透過性が亢進し水や小分子の液性因子が血管内から間質内に漏出、移動します。その結果、神経線維が圧迫され、間質内水腫や間質内細胞の酸素欠乏が引き起こされます。炎症性サイトカインが産生されるなどして神経免疫疾患や間脳病変が引き起こされる可能性があります。

上咽頭は主として外頸動脈の分枝である上行咽頭動脈より血液の供給を受け、その他は顔面動脈から分かれる上行口蓋動脈および一部は上甲状腺動脈の上咽頭枝の支配を受けます。アトラスの炎症による動脈系での影響は、血管周囲排液やグリンパティック系の機能が低下し間質液の停滞が生じます。その結果、神経組織内の老廃物は十分に排泄されず蓄積するため、認知機能障害が引き起こされます。また、動脈血流障害は扁桃炎や上咽頭炎、副鼻腔炎などの原因にもなります。

脳のリンパ流には血管周囲排液路、硬膜内リンパ管経路、末梢神経周膜管経路などがあり、脳内の髄液や間質液がこれらを経由して深頚リンパ節に至ります。血管周囲排液路は、間質液がウィルヒョー・ロビン腔内の動脈壁に沿って動脈血の流れと逆の方向に流れ、血管周皮細胞さらに細動脈の中膜平滑筋を経由して進み脳底部で血管を離れて頭蓋外に出る経路です。硬膜内リンパ管経路は、クモ膜下腔内の髄液が硬膜内を走行するリンパ管に注がれて頭蓋外に出る経路です。末梢神経周膜管経路は、髄液がクモ膜下腔に連続する末梢神経周膜管内腔を流れて神経終末端において末梢の組織に排出される経路であり、脳神経の中では嗅神経の周膜管経由のものが主要な経路とされています。咽頭後リンパ節は環椎の高さにあり、深頚リンパ節は頭部の所属リンパ節であります。上咽頭に炎症が生じると、鼻咽腔関連リンパ組織でのリンパ流に障害が発生し上流の脳内の流れにも影響を及ぼすと考えられます。

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