患者様向け
腰痛/椎間板ヘルニア/変形性腰椎症/腰椎すべり症/腰椎分離症/脊柱管狭窄症/仙腸関節炎
腰痛は、国民病とも呼ばれ高齢化社会に伴いますます増加傾向にあります。腰痛の原因は、不良姿勢、負担の蓄積、重い物を持ち上げた時の過負荷、加齢による脊椎の変形、腎臓病など内科的な問題、女性の場合はホルモンバランスの崩れからくる腰痛もあります。
また、昨今ではストレスにより脳の痛み抑制機能が低下することによって発症する腰痛の存在もクローズアップされています。総合的な診断を行い適切な治療を行うことが大切です。
1-整形外科的な腰痛
下記の病名は、腰痛の症状の出方とレントゲンやMRIによる画像にて診断されます。変形が重度で神経症状が出ている場合は手術の適応となりますが、適応とならないケースも大変多くあります。
►腰椎椎間板ヘルニア
脊椎の間でクッションの役割をしている椎間板の髄核が飛び出して、神経を圧迫します。負担の蓄積や重い物を持ち上げた時の過負荷が原因となるケースが多く、働き盛りの男性に多い腰痛です。
►変形性腰椎症
腰部の脊椎に「とげ」ができて神経を圧迫し、炎症を起こします。加齢に伴う腰椎の変形で、高齢者に多くみられます。
►腰椎すべり症
脊椎は積み木のように重なっています。下の脊椎に対して、上の脊椎の位置が前方にすべっている状態で、腰椎で起きている場合を腰椎すべり症と呼びます。
►腰椎分離症
脊椎の後ろ半分は輪の形をしています。この輪の部分に亀裂があり前方の椎体部分と分離しているものを 腰椎分離症と呼びます。腰椎すべり症を伴う場合が多いです。
►腰部脊柱管狭窄症
脊椎の後ろ半分の輪の内径が狭くなり、神経を圧迫して起こる腰痛です。加齢に伴う変形で、高齢者に多くみられます。
►腰椎捻挫(急性腰痛症)(ギックリ腰)
重い物を持ち上げる時や、急に腰を捻る動作をした時などに発症します。
►仙腸関節炎
仙腸関節の機能の低下が原因で起こる腰痛です。
2-腰椎捻挫(急性腰痛症)(ギックリ腰)
腰椎捻挫は、ギックリ腰や急性腰痛症の病態はほぼ同じと考えます。
腰椎捻挫は背骨のまわりの組織に障害が起こって激痛をきたす病気のことです。急に重いものを持ち上げたり、体を強くひねったり、交通事故などの衝撃で、腰椎に無理な力が加わった時に起こります。
普段は腰痛がなく、コンセントの電源を抜くだけの動作で、突然腰痛を起こすことを、俗に「悪魔の一撃」といいギックリ腰の病態を表現しています。
腰痛を発症してから4週間未満のものが急性腰痛と定義されています。突然腰が痛くなる、いわゆる「ギックリ腰」もこの中に含まれます。なお、発症から3ヵ月以上のものは慢性腰痛と呼びます。
病態:
腰椎には椎体、椎間関節、椎間板、椎弓、黄色靭帯、後縦靭帯、筋膜などさまざまな組織があり椎骨を支えています。急に重いものを持ち上げたり、体を強くひねったりすることで、それらの組織が障害されてしまい、筋や筋膜の損傷、炎症、腰部~骨盤の関節の機能低下を伴います。症状の出方により診断され、画像上は問題がない場合がほとんどです。
症状:
体を反らすと痛い、体を前に倒すと痛い、立ち上がる特に痛い、仰向けで寝ると痛みが出る、歩くと痛いなどの症状があげられます。交通事故などの強力な外力によって発症した腰痛は、下肢の痺れなどの症状が出る場合があり、腰椎椎間板ヘルニアなどの合併の有無を確認する必要があります。
検査:
腰椎レントゲン撮影で異常を認めないことが多いです。下肢の痺れ、痛みなどの症状があり、椎間板ヘルニアなどの可能性が否定出来ない場合はCT検査、MRI検査などが行なわれます。
治療:
急性腰痛では、非ステロイド性抗炎症薬・筋弛緩薬、アセトアミノフェン(解熱・鎮痛剤)、弱オピオイド(鎮痛剤)、ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液(鎮痛剤)の順で推奨されています。
腰椎捻挫(急性腰痛症)(ギックリ腰)に対しても、遠絡療法は有効な治療法です。
「魔女の一撃」はギックリ腰の病態を表現している
3-腰部脊柱管狭窄症
原因と病態:
脊柱管は脊椎(背骨)、椎間板、椎間関節、黄色靱帯などで囲まれた脊髄の神経が通るトンネルです。加齢、労働による負荷の繰り返しにより背骨が変形したり、椎間板が膨らんだり黄色靱帯が厚くなることで、神経の通る脊柱管を狭くなります。それによって神経が圧迫を受けると同時に神経周囲の血流が低下して、脊柱管狭窄症を発症します。
症状:
腰部脊柱管狭窄症は腰痛があまり強くなく、安静にしている時の症状はあまり感じませんが、背筋を伸ばして立ち続けたり歩き続けたりすることで、下腿部にしびれや痛みが出て歩きづらくなります。前かがみの姿勢になったり、腰かけたりするとしびれや痛みは軽減されます。いわゆる「間歇跛行(かんけつはこう)」がこの病気の特徴と言えるでしょう。
進行すると、下肢の筋力低下、肛門周囲のほてり、尿の出が悪くなり、尿が漏れるなどの症状が現れます。
►腰部脊柱管狭窄症の特徴的所見:間歇跛行
検査:
単純X線(レントゲン)写真である程度は推測できますが、確定診断するためにはMRIや脊髄造影などの検査が必要となります。しかし閉塞性動脈硬化症のような下肢の動脈がつまって血行障害を生じた時にも似たような症状が起こりますので、原因を正確に調べることが必要です。
日常生活上の注意;
日常生活では姿勢を正しく保つ事が必要です。
神経の圧迫は腰をまっすぐに伸ばして立つと強くなり、前かがみになるとやわらぎますので、外出の際は、疲れて症状がでる前に休みましょう。椅子を見つけたらひとまず休憩を、椅子がなければ壁に手をついて一休みを意識しましょう。歩く時は腰をやや丸めて、小股でちょこちょこ歩くと神経への負担が軽減されます。歩く時には杖をついたり、シルバーカーを押して腰を少しかがめるようにしましょう。また、自転車こぎは、症状が起こりにくいので、よい運動になります。
治療:
保存療法としてはリハビリテーション、コルセット、神経ブロックや脊髄の神経の血行を良くする薬などがあります。これらで症状が改善することもあります。
しかし、歩行障害が進行し、膀胱直腸障害、両足に症状が出ている場合など日常生活に支障が出てくる場合があれば、手術が適用となります。
腰部脊柱管狭窄症が軽度または中程度で、まだ手術をするほどではない状態であれば、遠絡療法で改善する可能性があります。当院では、遠絡とリハビリテーションを併用し治療した結果、症状が軽快した例を多く経験しております。
腰部脊柱管狭窄症の治療:ひざ抱え体操
両膝を胸まで引き上げ、両手で膝を抱えます。このとき、腰をしっかり丸めることを意識しましょう。お腹が出ている人は、両膝を広げて行っても構いません。
腰部脊柱管狭窄症の治療:腰まるめ体操
上体を曲げて両腕でひざを抱え込むようにします。このときに腰がしっかり丸まっていることを意識しましょう
4-腰痛の治療
薬物療法 | 消炎鎮痛薬 筋弛緩薬 漢方薬 |
---|---|
理学療法 | 温熱療法 低周波療法 運動療法 |
リハビリ | 関節可動域訓練 筋肉トレーニング |
神経ブロック | 痛みを遮断すると同時に交感神経をブロックし、痛みの信号が脊髄神経に伝わらないようにするだけでなく、血管を拡張させ、痛みの悪循環を改善します。 |
遠絡療法 | 即効性あり、治療実績あり、お勧めします |
[症例1]腰部脊柱狭窄症の治療後、東京マラソンに出場
ゴルフが趣味ですが、クラブを振ると腰が痛むため腰にサポーターを巻いて行っていました。診察時は、腰痛悪化のためゴルフは休んでいる状態。早く改善したいとの希望で、遠絡外来を受診されました。
初診時、治療前は立位で体を前屈と回旋した時の右腰から臀部にかけての痛みが強い状態でしたが、治療後は前屈も回旋も痛みが無くなりました。
2回目の治療後は、ゴルフも再開できて普段の痛みも改善。MRIにて脊柱管狭窄症の指摘はありましたが、現在は東京マラソンにも出場するなど良い状態を保たれています。
[症例2]腰椎椎間板ヘルニア(30代 女性)
特に理由はなく右の腰から仙骨部にかけての違和感と鈍痛が始まり、レントゲン検査にて第4・第5腰椎間の椎間板ヘルニアと診断されました。
手術の適応はなく、物理療法などを実施しましたが、常に鈍痛と違和感があり、完全に治るのかという不安も強く遠絡外来を受診されました。
初回治療後、腰痛は自覚症状が全く無くなりました。2回目の治療に来院された時は、腰椎4番5番の高さの右腰部に、重さと違和感が再発していましたが、痛みは無い状態でした。
治療にて、重みや違和感の改善を確認したあと、ライフフローが再び詰まらないように、自分で刺激できる治療ポイントを指導し、終了とさせていただきました。
[症例3]腰部脊柱管狭窄症(75才・女性)
5~6年前から腰痛。特に寝返り、起き上がり時など動きはじめに激痛が起こり、しばらくすると落ち着く状態。痛みの為、仰向けに寝ることができません。物理療法、マッサージなどの効果がみられないため、遠絡外来を受診されました。
初回治療後、立ち上がり時の痛みは続いているものの、立位姿勢では腰が伸びた状態となり1割ぐらいの改善を実感。2回目の治療後は、起居動作時の痛みは半減。仰向けに寝ることも可能となりました。現在、継続治療中です。
[症例4]腰部脊柱管狭窄症(89才・女性)
農家で若い頃から冬でも腰まで水に浸かるような重労働をされ、30代から足の冷えや腰痛が酷かったそうです。80代になりますます症状が悪化し、体全体冷え(特に下半身は入浴しても温まらない)両下腿の痺れ痛み、両足趾の痛み、腰痛、陰部から肛門の痛みなど様々な症状に悩まされ、腰を曲げても長く歩けない状態でした。
地元の整形外科や遠方の大学病院まで治療に通われましたが、効果が無いということで当院を受診されました。
週に1回の頻度で、3ヵ月間ほど治療を行ったところ、毎回治療後は痛みなどの症状がほぼ改善され、腰を伸ばしての歩行も可能になります。日常的に両下腿にあった痺れや痛みは無くなり、体温調節も改善されてきました。さらに改善をめざし、治療継続中です。
腰部脊柱狭窄症 小泉医院遠絡医療
[症例5]腰部脊柱管狭窄症(65才・男性)
65歳男性 N.Sさんは両足から足趾にかけての痺れと冷え症が常にあり、同時に腰痛と5分以上立っていると両膝から足部にかけての感覚が無くなり立っていられなくなるという症状がありました。
最初は当院で開催された「健康談話 腰痛の治し方」で遠絡療法の治療を体験され、4~5日痺れや痛みの調子が良かったことから再度遠絡療法の治療を受けに来られました。
治療後の結果は腰痛は軽快、足の痺れも半減し足に温かい感じがしてきたとのことでした。継続される中で、さらに改善されていくと考えられます。
腰部脊柱狭窄症 小泉医院遠絡医療
[症例6]坐骨神経痛の痛み(46才・女性)
バトントワリングの指導者で日頃から運動量の多い女性です。半年前から腰痛があり4ヵ月前から腰の重さが強まりました。仕事はなんとかされていましたが、1ヵ月前より左臀部から下肢後面の痺れが発症し整形外科を受診したところ坐骨神経痛と診断されました。
注射、牽引、点滴など数カ所のクリニックや治療院で実施しましたが、2~3日調子が良くなってもまた症状が戻ってしまうことが繰り返されました。車やイスから立ち上がる時の痛みが強く仕事にも差し支えるようになり当院を受診されました。
遠絡療法の治療後は、左臀部痛は軽快、痺れは残りました。翌日より徐々に痛みは消え、立ち上がり時の痛み痺れも改善し、軽いジャンプも可能になりました。2回目の治療で臀部痛はほぼ無くなり治療終了となりました。
[症例7]手術を勧められた腰椎椎間板ヘルニア(58才・岩手県女性)(腰痛・下肢痛・痺れ)
20代: | 出産後より冷え症となり、もともとあった腰痛が悪化しました。 |
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31歳: | 腰痛・右下肢の痛みと痺れがひどくなり、歩行困難となって腰椎椎間板ヘルニアの手術を受けました。手術は成功し、痛みは治まりましたが、右足趾のつけねから先の感覚が麻痺してしまいスリッパなどが履きづらくなりました。そのまま、軽い症状が出ても気にせずに生活を送っていましたが、56歳頃より右下肢の痛み・痺れと足先の感覚障害が悪化。再び歩行がしづらくなり、近隣の整形外科などで牽引療法やリハビリ治療を受けましたが残念ながら改善せず、反対側の左下肢にも痛みや痺れが出現するようになりました。 |
58歳: | 東京の腰痛専門病院を受診し、MRI検査の結果「腰椎椎間板ヘルニア」の再発と診断され早めの手術を勧められました。前回の経験から、手術以外の治療を希望され当院を受診されました。 |
腰椎椎間板ヘルニア 小泉医院遠絡医療
初診時の主訴は、以下のとおりです。
- 1.腰から両下肢全体の痛み(左>右)(左下肢全体が突っ張り膝が伸びない。)
- 2.右前足部の感覚麻痺(足趾曲げにくい)
- 3.長距離歩行困難(連続歩行で左下肢の脱力感)
- 4.頚~肩のこり
- 5.両手両足の冷え症 (冬季は酷いしもやけになる)
治療後は痛みが半減し、以降2週間に一度の治療を継続されました。3回目には、自宅での歩行距離も大幅に伸び、気にされていた右足先の感覚障害にも改善がみられています。
解説:
MRIの所見では「腰椎椎間板ヘルニア」ということで、長距離歩行ができないため買い物などの日常生活にも制限があり、手術を勧められていた方です。遠絡療法にて、腰椎部は勿論、頚部~脳幹部~間脳(視床、視床下部など)のライフフローを改善することで、ヘルニアからの下肢痛だけでなく、冷え症、足先の感覚障害などの全身に出ている症状に対応することができました。
小泉医院健康談話で、小泉正弘 医師が取材を受け雑誌に掲載された「腕の二点押し」を紹介し、代表の方に体験していただきました。
わずか1~2分の刺激でしたが「全然違う!」とおどろきの声をいただきました!
自分でできる2点押し ご興味ある方はこちらのページもご参照ください☆
「2016 健康雑誌 壮快12月号 脊柱管狭窄症~自分でできる腕の2点押し」
マスコミ取材 健康雑誌
マスコミ取材 健康雑誌
マスコミ取材 健康雑誌
2019年10月マキノ出版
医療従事者向け
1-静力学的腰痛症
正常な骨盤傾斜角は30°であり、骨盤傾斜の異常は腰椎保持筋群のバランスに乱れが生じると、不良姿勢を取るようになり、姿勢性腰痛が生じる
腰椎前弯と骨盤傾斜を減少させるため、腹直筋や内外腹斜筋、大臀筋、ハムストリング筋の筋力強化を行う必要があります。
2-様々な姿勢の椎間板への負担を比較
脊柱管狭窄症の発症には、日常生活の不良姿勢が大きく関与します。椅子に座った姿勢は、立った姿勢よりも腰に負担がかかります。特に猫背や前屈みの悪い姿勢は、背骨の腰の部分にあたる腰椎にかかる負担を増加させ、その結果、腰椎の変形や老化を早め、脊柱管を狭めることになるのです。
3-腰椎椎間板ヘルニア
[原因]:
痛みの発生原因は、椎間板に体重等の圧が加わり椎間板が強く押され、或いは加齢などにより変性し、椎間板の中に存在する髄核というゲル状の組織が、外に飛び出すことにより起こります。突出した部分が後ろにある神経を圧迫してしまうからです。
腰椎椎間板ヘルニアの症状は、腰痛をはじめ、下肢の痛みや痺れ、足が上手く動かせなくなる運動麻痺、感覚が鈍くなる感覚麻痺、前屈姿勢に腰痛が増強するなどが挙げられます。
中腰や悪い姿勢での重作業などでヘルニアが起こりやすくなることが知られています。
[検査]:
患者の下肢をあげて、脚が30度から70度の間の角度にあるときに患者が坐骨神経痛を訴えた場合、SLR検査は陽性であり、腰椎椎間板ヘルニアが疼痛の原因である可能性を示唆します。
陰性であったときは、その腰痛は別の原因であることが高いとされます。
[症状]:
腰椎椎間板ヘルニアは、お尻から太もも、膝、足にかけて激しい痛みが起こる坐骨神経痛を伴うケースが多いです。
腰椎椎間板ヘルニアを起こしやすい場所は、第4腰椎と第5腰椎の間、或いは第5腰椎と仙骨の間です。第4腰椎と第5腰椎の間にある椎間板ヘルニアでは、ふくらはぎの外側から足の親指にかけての痛みやしびれ、第5腰椎と仙骨の間にある椎間板ヘルニアでは、膝の後ろ側から足の裏側にかけて、痛みやしびれが起こります。
腰椎椎間板ヘルニアの場合、背中を反らしているときや、寝ているときは痛みが楽になります。反対に、背中を丸めたり、前屈みになったりすると神経が圧迫されて痛みやしびれが強くなるのが特徴です。
4-腰椎分離症・腰椎分離すべり症
[原因]
多くは体が柔らかい10代頃に、腰の回旋運動やジャンプを行うことで腰椎の後方部分に亀裂が入って分離症が起こります。その後、スポーツの練習などで腰椎を反らす・回すなどを繰り返すことで、徐々に「分離すべり症」に進行していく場合があります。
一般の方でも5%程度に腰椎分離症が発症します。特にスポーツ選手では、30~40%に腰椎分離症の発症が見られます。
[症状]
腰椎分離症は椎弓の関節突起間部が分離している状態です。腰椎分離すべり症は椎弓の関節突起間部が分離したことで、椎骨が腰椎の前方に滑り出てくる状態です。
症状は腰部痛、臀部痛、大腿外側の重苦しい痛みが背中をそらした時に出たり、前かがみ姿勢で腰痛が増強するなどが生じます。長時間の運動や長時間の立位、座位、中腰姿勢でも腰痛がでますが、椎間板ヘルニアの様に神経麻痺症状を伴うことはありません。
腰部の狭い範囲にズキッと響く痛みが特徴的で、分離高位の腰椎に叩打痛、圧痛を認める場合があります。
5-腰部脊柱管狭窄症
脊柱管狭窄症は頚椎ないし腰椎に発症することが多い疾患です。
脊柱管狭窄症の脊柱管とは、背骨(脊椎)の後側にある縦方向の管のことで、中をとても太い神経である脊髄が通っています。脊柱管狭窄症はこの脊柱管が狭められて、中を通る神経が圧迫される病気です。
腰部の脊柱管は5個の腰椎に囲まれています。腰椎は靱帯や、椎間板と呼ばれる一種のクッションのような働きをする組織によりつながれています。この椎間板は正常では弾性を有しており、上下の腰椎を支えるとともに、前後左右に運動することが可能になっています。また脊柱管にある脊髄馬尾神経の背側には、背骨を結びつける黄色靱帯と呼ばれる組織があり、上下の腰椎を支えています。
黄色靭帯には、加齢とともに、肥厚や石灰化という変化が生じてきますが、これらの変化が強くなると脊柱管が相対的に狭くなり、脊髄馬尾神経が圧迫されるようになります。この結果、腰部脊柱管狭窄症の下肢痛み、しびれや間欠跛行、腰痛が生じるようになります。
[原因]
脊柱管は背骨、椎間板、関節、黄色靱帯などで囲まれた脊髄神経の通るトンネルです。
加齢、労働、あるいは背骨の病気による影響で椎間板の膨隆、椎体の変形、椎間関節や椎弓の骨棘、黄色靱帯の肥厚、後縦靭帯の肥厚などにより、脊柱管内の神経が圧迫されると腰痛、下肢痛、しびれが出現します。
特に中高齢者の方に起こりやすい病気です。背骨を後ろに反らすと脊柱管が狭くなるため痛みが増し、前に曲げると広がるので楽になります。間歇性跛行(かんけつせいはこう)が起こるのが特徴です。
[神経圧迫の部位による分類]
馬尾型
腰部の一番下の馬尾神経の束が圧迫をうけているので、両下肢や陰部のしびれ、膀胱直腸障害を認めることもあります。
神経根型
腰部の脊髄の神経線維が圧迫をうけているので、片側の臀部から下肢へ放散する痛みや痺れがでます。
混合型
馬尾と脊髄の神経線維が圧迫をうけているので、両方の症状が出ます。
[症状]
①腰部脊柱管狭窄症の特徴的な症状は、しばらく歩くと下肢(太ももからふくらはぎやすねにかけて)のしびれや痛みが出て歩けなくなり、少し休むと治まってまた歩けるようになる間歇性跛行(かんけつせいはこう)です。そのため長い距離を続けて歩くことができません。
②腰部脊柱管狭窄症では、起立歩行中、背筋を伸ばして立っていたり歩いたりすると、ふとももや膝から下に痺れや痛みが出て歩きづらくなります。しかし、姿勢を少し前かがみになったり、腰かけたりすると痺れや痛みは軽減されます。
③歩くのはつらいが自転車には乗れます。
④後ろに反る体勢で症状が悪化し、前屈みの姿勢で症状が緩和します。
⑤進行すると、馬尾神経症状、下肢の筋力低下、臀部の周囲にしびれやほてり、膀胱直腸障害、肛門周囲のほてり、尿の出が悪くなる、尿漏れなどが起こります。
[治療]
①薬物療法
消炎鎮痛薬・筋弛緩薬などの内服薬、貼り薬や塗り薬、漢方薬などを処方します。
②理学療法・リハビリテーション
ひざ抱え、腰まるめ体操を行う
③神経ブロック注射・局所ステロイド注射
痛みを遮断すると同時に交感神経をブロックし、痛みの信号が脊髄神経に伝わらないようにするだけでなく、血管を拡張させて、痛みの悪循環を改善します。
④仰向けで椅子に両足をのせる
枕を当ててあおむけに寝ます。いすに両足をのせて10分間リラックスします。時々足首を動かします。
[行う目安]
1セット:10分間を3回
1日3セット
毎日行い、2~3週間継続
6-腰痛に対する遠絡療法
画像検査上の問題と症状は、必ずしも一致しない場合が多々あります。背中が大きく曲がっていても全く痛みなく過ごされている方もいます。そのような方は、腰部のライフフローが良好であると考えられます。逆に、脊髄や脊髄神経の微細な炎症によりライフフローが滞っていると、画像検査上の問題が無くても神経線維が圧迫され痛みや重み、痺れなどが現れます。
遠絡療法では、腰痛の出ている脊椎のレベルと症状の範囲に応じライフフローの調整を行います。治療後、すぐに痛みや痺れが改善します。炎症の度合いにより、何回かの継続治療が必要となります。
Q1脊柱管狭窄症で手術を受けるのは、どのような場合ですか?
①排尿障害(尿漏れや尿の排出困難)、排便障害を起こした時:おしっこが最後まで出にくくなった、尿失禁や便漏れなどの場合、早急に手術をしないと神経がダメージを受けて、手術をしても元に戻らなくなることがあります。
②歩くのに支障が出てきた:疼痛で長く歩けない、ほっておくと、どんどん歩かなくなってしまい、足の筋力が弱くなって最後には歩けなくなる恐れがあるからです。
③痛みのために、日常生活に支障が出てきた:痛みに耐えられない場合、生活に大きく支障をきたす場合、保存的治療で改善の見込みがない場合は手術を薦めます。
Q2脊柱管狭窄症で遠絡療法で軽快される症例がありますか?
上記の手術適用の症例を除いて、遠絡療法は治療法として良い選択肢の一つと考えます。当院では、遠絡療法とリハビリを併用し、症状が改善した方が多くおられます。詳しくは遠絡療法をご参照ください。
当院での治療実績が多い疾患
交通事故後遺症
頚椎捻挫(外傷性頚部症候群)