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医療法人東西医会 小泉医院遠絡医療

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顔面神経麻痺

難病指定医·遠絡指導医による
遠絡医療・バイオレゾナンス
EAT. ア-ユルヴェ-ダ. リハビリ

の診療をしている総合医院です

患者様向け

顔面神経麻痺とは

顔面神経は、顔の表情筋や耳の中のアブミ骨筋を支配する運動神経、涙腺や唾液腺の分泌をつかさどる副交感神経、そして味覚神経から構成されています。

顔面神経麻痺が起きると、顔面の表情筋が麻痺し、いわゆる「顔の左右が非対称になり、片方が曲がった」状態になります。額のしわ寄せが出来なくなり、まぶたを閉じるのが困難となります。また、水を飲むと口角から漏れてしまうこともあります。

さらに、顔面神経には味覚を伝える神経、涙や唾液の分泌を調節する神経、大きな音が耳に入った場合に音から耳を守るために鼓膜を緊張させる反射(耳小骨筋反射)を起こす神経が含まれるため、顔面神経麻痺では、表情筋の麻痺ばかりでなく、味覚障害、涙や唾液の分泌低下、音が響くなどの症状を伴う場合があります。

顔面の表情などの運動は顔面神経の固有顔面神経が行います。固有顔面神経は橋にある運動核からスタートし、中間神経と合流して内耳道を走ります。内耳道底で内耳神経と分かれて顔面神経管に入り、鼓室の内側壁の近くで膝神経節を作って大きく曲がった後、茎乳突起を通って耳下部に現れ、顔面の表情筋に分布します。

上記の経路のどこかで障害されて起こる病気が顔面神経麻痺です。頭蓋から出ると顔面神経は5つの枝に分かれるので、頭の中で障害が起こるとすべての枝が麻痺し、外傷や腫瘍などで枝の先で障害を受けると部分的に麻痺が起こります。顔面神経麻痺の原因としては、ベル麻痺、ラムゼイ・ハント症候群などのウイルス性、細菌感染、脳内病変、外傷、腫瘍など、多岐にわたります。

1-顔面神経麻痺の原因

(1)中枢性(片側性)

主に、脳梗塞や脳腫瘍などの脳実質の病変が原因

(2)末梢性

1)片側性

①ベル麻痺(約60%):特発性顔面神経麻痺
原因なく急に起きるもので、循環障害による神経の腫れによるもの、または単純ヘルペスⅠ型(HSV-1)の再活性化による神経炎発症後1~2日で片側の顔面神経麻痺の症状がでる場合があります。自然寛解率70%、治癒率約95%と一般的に予後は良好とされています。

②ラムゼイ・ハント症候群(約15-20%)
膝神経節(しつしんけいせつ 頭頚部にある顔面神経の神経節)に潜伏していた水痘・帯状疱疹ウイルス(HZV)の再活性化による神経炎が原因であり、顔面神経に隣接する内耳神経へも炎症が波及しやすいです。重症化すると脳炎などに拡大するため、顔面神経麻痺に加え耳介・外耳道に水疱、難聴、耳鳴、めまい、眼振などの症状があります。自然寛解率は30%、治癒率は60-70%で、発症したら至急、脳神経外科や耳鼻咽喉科などに受診が必要です。

③耳下腺腫瘍、小脳橋角部腫瘍、外傷、中耳炎

2)両側性

①ギランバレー症候群

②サルコイドーシス

2-顔面神経麻痺の症状

3-顔面神経麻痺の重症度評価表

柳原法(麻痺程度の評価法)

項目 ほぼ正常(点) 部分麻痺(点) 高度麻痺(点)
安静時非対称 4 2 0
額のしわ寄せ 4 2 0
軽い閉眼 4 2 0
強い閉眼 4 2 0
片目つぶり 4 2 0
鼻翼を動かす 4 2 0
頬を膨らます 4 2 0
口笛 4 2 0
イーと歯を見せる 4 2 0
口をへの字に曲げる 4 2 0
合計 40 20 0

麻痺側の動きを健側と比較し肉眼的に評価することは、顔面神経麻痺の診断として最も簡便かつ重要です。愛媛大学医学部教授の柳原医師は安静時の左右対称性と9 項目の表情運動を4点(ほぼ正常)、2点(部分麻痺)、0点(高度麻痺)の3 段階で評価します。

40点満点で10点以上を不全麻痺、8点以下を完全麻痺、あるいは20点以上を軽症、18~10点を中等症、8点以下を重症とします。また、36点以上でかつ中等度以上の病的共同運動(口を動かすと、一緒に目が閉じてしまうなどの症状)のないものを治癒と判定しています。

4-顔面神経麻痺の治療

顔面神経麻痺の薬物治療の二本柱は、ステロイド(副腎皮質ホルモン)と抗ウイルス剤です。ステロイドは抗炎症・抗浮腫効果を持つ重症化防止薬ですが、治療は「as soon as possible」が原則であります。抗ウイルス薬はウイルスの増殖を阻害しますが増えたウイルス自体を殺すことはできないため、できるだけ発症早期に服用していただくことが肝心です。

顔面神経が麻痺すると、神経に浮腫、血流障害を来します。血流障害が進み神経線維が死んで、神経が変性するまでの期間がおおよそ10日から2週間と言われています。一度変性すると神経線維を再生させることは困難です。

1)副腎皮質ステロイド剤の投与

神経の炎症を取るために副腎皮質ステロイド剤が効果的で、いかに早く内服を開始するかが非常に重要です。日本顔面神経研究会学会の指針では、プレドニゾロン1日あたり軽度であれば30mg、中度であれば60mg、重度であれば120mgから始めて、10日ほどかけて終了する治療を進めています。重症な場合には、さらにステロイドの量を増やしたり、耳にステロイドを注射することでさらに大量に投与する方法があります。

2)抗ウイルス剤の投与

ベル麻痺の治療はステロイド剤が基本ですが、抗ヘルペス薬の効果が期待できる無疱疹性帯状疱疹とベル麻痺の区別は発症初期には難しいことがありますので、少量の抗ヘルペス薬の内服を勧めることがあります。

ラムゼイ・ハント症候群には抗ヘルペス薬をできるだけ早い時期に、充分な量を飲むことが大切です。

3)ビタミン剤・血流改善剤の投与

神経の栄養であるビタミンB12や血流障害を改善させるために血流改善剤を併用します。

4)点眼薬の投与

眼球の角膜は眼のまばたきにより涙から常に栄養補給を受け、また、乾燥しないよう保護されています。顔面神経麻痺により麻痺側の瞼が閉じにくくなりますが、その為眼のまばたきが出来なくなり角膜炎を起こし、ひどい時には失明につながることもあります。そのため、乾かないよう、1日何回も点眼薬をさすようにします。

5)顔面神経麻痺のリハビリテーション

顔面神経麻痺は全体の15%程度の患者さんで発症から半年~1年経過後も麻痺が持続し 後遺症が残ると言われています。主な後遺症としては顔面の拘縮(ひきつれ)と目を閉じたときに口が動いてしまうなどの病的共同運動があげられます。顔面神経麻痺のリハビリは筋力を強化するためではなく後遺症を予防する目的です。焦らずじっくり行うことが大切で、マッサージのやり過ぎや低周波治療器などの電気刺激はかえって顔面拘縮や病的共同運動を助長することがあります。

6)マッサージ

麻痺している筋肉は動かしていないため凝っていきます。長期間筋肉を動かさないと筋肉が萎縮し神経が再生しても十分に動かせないことがあります。その予防のために筋肉をマッサージしてほぐします。しかし強すぎたり間違ったやり方をしたりすると、かえって顔の動きが悪くなることもあります。

7)遠絡療法

柳原の顔面麻痺評価表で40点満点の20点(軽症)、かつ発症してから3日以内の症例は遠絡療法の適用があります。損傷の程度が軽ければ、ワーラー変性*まで至らず神経伝達の障害のみで済むこともあります。

*ワーラー変性とは:神経線維は損傷をうけると、損傷部位より末梢の軸索では細胞体からの栄養が供給されないため、2~3日以内に神経が変性・消失します。末梢神経は、ワーラー変性が起こっても正常に回復することが多いです。神経再生の過程で混線が起こると後遺症をきたすことがあります。

►遠絡の右顔面神経痛の瞬間的除痛法

►治療にあたって注意すべきこと

ステロイド剤は色々な効果を持つ反面、副作用も多数知られています。特にコントロール不良な糖尿病、高血圧、胃潰瘍の方は病状が悪化する可能性があります。またB型肝炎ウイルスに罹患したことのある方や気付かずに感染している方は肝炎が劇症化する可能性があるため注意が必要です。

重度麻痺、高齢、誘発筋電図での複合筋活動電位が健側の10%以下、発症3~4週を経ても回復が見られない場合は、予後不良であるようです.

3ヵ月を経過してもまったく麻痺が回復しない等、顔面神経内部で神経が圧迫される「神経絞扼性麻痺」の可能性が高い場合は、顔面神経の圧迫を解放する顔面神経減荷術の手術ができる専門病院へ紹介します。

5-顔面神経麻痺の後遺症

1 病的共同運動
顔の動きは発症後2-3ヵ月で一旦よくなっても、半年後に病的共同運動が現れ悪化したようにみえることがあります。例えば、目を閉じると口元が引き連れる、口を動かすと目も同時に動くなどの症状がでます。
病的共同運動をなるべく起こさないために、顔が動くようになってきたら顔面の筋肉を動かすトレーニングを行います。ミラーバイオフィードバックといって、鏡を見ながら目をつぶらないようにして口元を動かしたり、口元を動かさないようしたりして目を開閉します。
後遺症の治療によく用いられる方法が、ボツリヌストキシン(ボトックス®)注入療法です。この方法は病的共同運動、拘縮に効果がある方法です。効果が一時的で、調整することができます。一方で、徐々に効果がなくなることから3-4ヵ月ごとに注入を繰り返す必要があるのがデメリットともなります。

2 不全麻痺:顔の筋肉が十分に動かせない

3 拘縮:顔の筋肉にこわばりや違和感がでる。

4 ワニの涙症候群:食事をしようとすると涙が出る。

5 アブミ骨筋性耳鳴:顔を動かそうとすると耳の中で音がしたり違和感が出たりする。

医療従事者向け

1-顔面神経の解剖

1 中間神経:

顔面神経の上唾液核から起こる涙腺、顎下腺、舌下腺に分布する副交感神経線維や舌前2/3味覚を伝える味覚線維があります。これらの非運動性線維は、運動線維と内耳神経との中間で脳幹を出ることから中間神経とも呼ばれます。中間神経のうち、副交感神経は上唾液核、味覚の神経は孤束核からスタートします。それぞれ涙腺、唾液腺、舌に行く枝を出します。

2 固有顔面神経:

顔面の運動は顔面神経の固有顔面神経運動枝が行います。固有顔面神経は橋にある運動核からスタートし、中間神経と合流して内耳道を走ります。内耳道底で内耳神経と分かれて顔面神経管に入り、鼓室の内側壁の近くで膝神経節を作って大きく曲がった後、茎乳突起を通って耳下部に現れ、顔面の表情筋に分布します。

3 アブミ骨神経;

顔面神経の運動神経は内耳道でアブミ骨神経を分枝します。

2-顔面神経の働き

顔面神経は、運動神経、感覚神経、副交感神経を含みます。運動神経は、橋の顔面神経運動核を出て、表情筋、頬筋に分布し、主に顔の筋肉を動かし、目や口を開けたり閉じたりする神経です。鼓膜のアブミ骨筋に分布し、聴覚に関与します。感覚神経は延髄の孤束核から出て舌前2/3に分布し、味覚を脳に伝えます。副交感神経は、橋の上唾液腺から出て涙腺に分布して涙の分泌を、その後、耳下腺や顎下腺に分布し唾液の分泌を促します。

3-顔面神経麻痺の症状

顔面神経の枝分かれする順番の上から目(涙腺)、耳(アブミ骨)、口(舌)の順に障害が出る時の症状を述べます。

1 顔の表面への影響:表情筋の麻痺

固有顔面神経は顔の表情筋を支配するので、麻痺すれば、顔が動かなくなります。

名称 主な働き
前頭筋 額に皺を寄せる
眼輪筋 目を閉じる
口輪筋、頬骨筋 口の開閉を行う・口角を持ち上げる

2 目への影響:涙液分泌の低下

上唾液腺から発した副交感神経のうち、大錐体神経は涙液分泌を司ります。大錐体神経が麻痺すれば、涙液分泌が低下し、眼球乾燥感(dry eye)を訴えます。

3 耳への影響:聴覚過敏

固有運動神経の一部は顔面神経管内でアブミ骨神経となり、耳小骨の一つであるアブミ骨に至ります。アブミ骨筋は過大な音が聞こえた時に収縮し、耳小骨の動きを止めて、大きなエネルギーが内耳に伝わるのを阻止します。従って、この神経が麻痺すれば、聴覚過敏を来します。

4 舌の味蕾への影響:味覚低下

孤束核から発した味覚の神経は鼓索神経で、舌前2/3の味覚を支配します。鼓索神経が麻痺すれば、味覚低下を来します。

5 顎下腺、舌下腺への影響:唾液分泌低下

上唾液核から出た副交感神経は、鼓索神経と合流し、唾液腺(顎下腺と舌下腺)に至ります。鼓索神経の副交感神経成分が麻痺すれば、理論的には唾液分泌の低下を来しますが、最大の唾液腺である耳下腺が舌咽神経支配であるため、実際に口腔内乾燥感を訴えることはありません。

4-顔面神経の走行と其々の障害部位の症状

5-顔面神経麻痺の原因

顔面神経麻痺の原因は脳腫瘍などの中枢性障害によるものと、ベル麻痺、ラムゼイハント症侯群などの末梢性障害によるものがあります。ここで、頻度の高いベル麻痺と臨床上特に注意を要するラムゼイハント症侯群について説明します。

1 ベル麻痺(特発性末梢性顔面神経麻痺)

突然に起こる顔面神経麻痺のことで、普通、顔面神経の麻痺は、起こり始めてから数時間あるいは2、3日の間、進行することが多いようです。ある日、鏡を見た時に自分で、あるいは他の人に指摘されて始めて顔の半分がゆがんでいること(非対称)に気付くことから始まります。麻痺の起こった側の口もとが下がって、ひどい時には、口の端からよだれや食べている物がこぼれたりします。ベル麻痺は核下性麻痺で、顔面神経が脳より外に出てからの部分で障害を受けますので、その場合、顔の下半分の麻痺だけではなく、麻痺の起こった側の額のしわがなくなり、また、その側のまぶたを閉じられなくなったりします。ベル麻痺の本態は循環障害による神経の腫れによると考えられています。単純ヘルペスⅠ型(HSV-1)の再活性化による神経炎が原因と言われています。

50%の方では3週間以内に、25%の方ではは3ケ月以内に完全に治ります。すなわち70~80%の方では完全に治るのですが、10~15%の方に後遺症としての麻痺が残ります。なお完全な麻痺になった場合、あるいは3週間以内に改善のきざしが出ない場合には治りにくいと言われます。

2 ラムゼイハント症侯群

膝神経節(しつしんけいせつ 頭頚部にある顔面神経の神経節)に潜伏していた水痘・帯状疱疹ウイルス(HZV)の再活性化による神経炎が原因であり、顔面神経の麻痺に加えて外耳道後壁、鼓膜の後半分、耳介後部の皮膚などに帯状疱疹の水泡を認めることが多く(85~90%)、耳介や外耳道に有痛性の水疱がみられます。末梢性顔面神経麻痺の他に、難聴、耳鳴、めまい、眼振などの症状もみられます。水泡は顔面神経の麻痺が出て、しばらくたってから出てくることが通常である為、この病気であるとの診断が遅れることが多いです。またラムゼイハント症侯群のうち、無疱疹帯状疱疹は、皮疹を認めないためベル麻痺と臨床診断されることが多く、注意が必要です。

自然寛解するのは約30%で、発症3日以内にステロイド薬と抗ウイルス薬、ビタミンB12の併用療法を行うと治癒率は60-70%にあがるとされています。

6-顔面神経の中枢性障害と末梢性障害

7-顔面神経麻痺の治療

治療効果 薬・治療法
神経炎症・浮腫の改善 副腎皮質ホルモン(プレドニンゾロン)
ウイルス増殖の抑制 抗ヘルペスウイルス薬 (アシクロビル)
神経再生の促進 ビタミンB製剤
顔面神経難治性後遺症 ボツリヌス療法・外科手術
単純ヘルペスウイルスによる顔面神経麻痺 遠絡療法で改善例があります

作用機序はホームページの「遠絡療法」をご参照ください。

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