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予約診療
医療法人東西医会 小泉医院遠絡医療

埼玉県草加市中央1-1-18  048-927-5370

CRPS(Complex Regional Pain Syndrome)
複合性局所疼痛症候群

難病指定医·遠絡指導医による
遠絡医療・バイオレゾナンス
EAT. ア-ユルヴェ-ダ. リハビリ

の診療をしている総合医院です

患者様向け

複合性局所疼痛症候群(CRPS)とは

複合性局所疼痛症候群(Complex regional pain syndrome:CRPS)は、以前はカウザルギー・反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)などと呼ばれていました。重度の神経障害性疼痛のひとつです。

多くは、怪我や手術、あるいは関節の長期固定などをきっかけとして発症し、きっかけの状況とは不釣り合いな激しい痛みや触ると悪化する痛みが続きます。特にきっかけなく発症することもあり、しばしば原因不明といわれます。

風があたる、服がすれる、湿布を貼るなど通常は痛みにつながらない程度のわずかな刺激を強い痛みとして感じる感覚障害(アロディニア)を伴う場合もあります。打撲後の傷は治癒しているのに打撲した部位から遠位にかけてビリっと電気が走るような電撃痛や火で焼かれているような灼熱痛が発生する等(ピリピリ、チクチク、ズキズキ、ガンガン・・)疼痛部位に浮腫や皮膚血流の変化を伴う場合も多々あり、交感神経の関与が疼痛を引き起こす一因と考えられています。

►神経障害性疼痛

何らかの原因で末梢神経や中枢神経が損傷や障害をされたことによって生じる疼痛です。原因としては、外傷や手術、癌(がん)・糖尿病・帯状疱疹などがあげられます。軽く触れただけで激しい痛みを感じたり、刺激を受けなくても強い痛みが出たり、焼けるような痛みが持続します。

1-複合性局所疼痛症候群(CRPS)の症状

  • 外傷などのきっかけがなく徐々に痛みが始まり、痛む場所が移動したり、時間によって痛みが出たり出なかったりする。
  • 怪我、骨折などきっかけとなった外傷は治癒したのに痛みが治らない。
  • 長い間、痛みやむくみが続いたり、関節の動きが悪くなったりする。
  • 痛みの部位が、時間経過とともに拡大し、ピリピリ、チクチクする。または、ズキズキガンガンする。または、シュワシュワ感などおかしな感覚が伴う。
  • ビリッと電気が走るような痛み、火傷をしているような熱い痛みを感じる。
  • レントゲンやMRI検査、リウマチ検査などでは異常がみつからず原因不明。

2-複合性局所疼痛症候群(CRPS)の診断

自覚的症状(病気のいずれかの時期に、以下の自覚的症状のうち2項目以上該当すること)

  1. 皮膚・爪・毛のうちいずれかに萎縮性変化
  2. 関節可動域制限
  3. 持続性ないし不釣り合いな痛み、しびれたような針で刺すような痛み、または知覚過敏
  4. 発汗の亢進ないしは低下
  5. 浮腫

他覚的所見(診察時において、以下の他覚的所見の項目を2項目以上該当すること)

  1. 皮膚・爪・毛のうちいずれかに萎縮性変化
  2. 関節可動域制限
  3. 異痛症(触刺激または熱刺激)ないしは痛覚過敏(ピンプリック)
  4. 発汗の亢進ないしは低下
  5. 浮腫

CRPS臨床用判定指標(CRPS研究会、2008)

3-複合性局所疼痛症候群(CRPS)に対する
一般的な治療法

1.薬物療法

  • 非ステロイド系抗炎症薬(例:アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、インドメタシン等)
  • 典型的な機序を介さず中枢神経系に作用する薬剤(例:トラマドール)
  • 抗うつ薬(例:アミトリプチリン、ドキセピン、ノルトリプチリン、トラドゾン等)
  • 経口リドカイン(メキシレチン-やや実験段階)
  • 抗痙攣薬(カルバマゼピン、ギャバペンチンは持続痛を同様に緩和する場合がある)

2.交感神経ブロック・交感神経切除術

3.理学療法

当院では、一般的な治療法(薬物療法、交感神経ブロック・切除術、理学療法)で改善されない症状に対して、遠絡療法という東洋医学的な手法を用いた治療を行っています。CRPSや神経障害性疼痛という診断名がつかない痛みに対しても、治療は可能です

4-複合性局所疼痛症候群(CRPS)に対する遠絡療法

遠絡医学では、「神経繊維が破壊され、表在感覚である温度覚・痛覚が亢進し、触覚と圧迫覚が低下している病態を伴う症候群」を「神経線維破壊症候群」と提唱しています。神経障害性疼痛や複合性局所疼痛症候群(CRPS)も「神経線維破壊症候群」のひとつとして考え治療します。

一般的な西洋医学では、CRPSのほとんどが痛みの出ている局所に原因があるとして対応しています。しかし、実際は局所のCRPSと診断されているものの多くは、脊髄や脳など中枢性の神経線維破壊によって手足や顔に症状が出ているケースが多いと遠絡医学では考えています。

原因部位の診断を正確に行ない、その部位に対する遠絡療法を実施することで、上記の例にあげた激痛のほとんどがその場でやわらぐことを実感できます。遠絡治療を繰り返すことにより疼痛をやわらげると同時に破壊された神経線維の修復が可能です。

神経障害性疼痛、複合性局所疼痛症候群のどちらに対しても、遠絡療法は非常に有効な治療法です。多くの治療実績があります。

▶神経線維破壊症候群の障害部位による遠絡的分類

①大脳が原因

脳卒中発症後に、右または左側の顔や体幹、手足などに後遺症として、触れると悪化する痛み
➡︎大脳の神経細胞 及び 神経線維破壊に伴う神経線維破壊症候群です。細胞の破壊は再生できないので麻痺などの運動障害は改善できませんが、神経線維の修復は促進できるので、痛みは治療できます

②脳幹が原因

奥歯を噛みしめるとビリッと痛む症状 ⇒ 三叉神経の神経線維破壊に伴う神経線維破壊症候群

③脊髄が原因

頭部の表面、上肢、下肢などの部分に触れると悪化する電撃痛や灼熱痛がある
➡︎脊髄の神経線維破壊に伴う神経線維破壊症候群

④脊髄神経が原因

帯状疱疹後神経痛 ⇒ 脊髄神経の神経線維破壊にともなう神経線維破壊症候群

⑤局所が原因

外傷や手術など末梢神経の損傷後、その神経が支配する末梢の領域に電撃痛や灼熱痛、浮腫、皮膚の血流変化、萎縮などの症状がある痛み

▶遠絡療法による治療の実際

治療の処方式は遠絡診断指導医、遠絡治療指導医が処方します。体の表面にある遠絡独自の治療点を、治療用レーザー光や遠絡治療用押し棒にて刺激します。治療点は、鼻の下、口元、のど、腹部、手、足、指、などにあります。

医師の診察にて個々の症状と病態の説明(約40分)と遠絡処方作成。その後、初回治療は医師が処方内容に沿って30-50分程度の治療を行い、効果を確認します。

遠絡療法は、注射や薬、手術などを必要としません。原因部分のライフフローと呼ばれる身体循環の様々な要素(東洋医学でいう気、血、水)を改善することで、症状の軽快に繋がります。

【症例1】足関節捻挫後に発生したCRPS(12才男児)

12才の男児。バスケットの練習中、ジャンプした時に、左足首を強く捻りました。足首が腫脹し痛みましたが、自然に治るだろうと自分で湿布をしていました。
1ヵ月後に足首から足趾(ゆび)に、触れると火傷をしたような痛みが走るようになりました。左外果周囲から足背、足底が腫れ、第3.4.5趾が細くなっています。その後、転々として、他院の治療を受けましたが、改善せず、遠絡治療の目的で、当院受診。
初診時、左外果から足背にかけて、触れると悪化する痛みがあり、歩行は杖を使用していました。当院で週1回遠絡治療を受けて、1ヵ月で杖を使用せず歩けるようになり、3ヵ月で足背も触れるようになりました。その後、月1回の治療を受け約2年で足の痛みは完全に消失しました。

解説:

この症例は遠絡医学的には、神経繊維破壊症候群のタイプ5:区域的に発症するCRPSの足関節の捻挫によるものです。遠絡治療によって、足関節の神経再生、炎症修復、靭帯修復などを促進し、回復に至った症例です。

作用機序はホームページの「遠絡療法」をご参照ください。

【症例2】膝手術後に発生した左上肢、下肢の触れないいたみとしびれ

12才女児。両膝の痛みにて、大学病院を受診、両膝内側膝蓋滑膜壁障害と診断されました。13才の時、右側膝関節鏡視下滑膜切除術を受けました。
1ヵ月後、左側膝関節鏡視下滑膜切除手術を受けました。手術直後より、左大腿部全体と左肩関節から指にかけて、触ると悪化する強い痛みと感覚障害となり、安静でも激しく痛みごくわずかの刺激でも痛みが悪化する為、歩行困難となりました。手術を行った大学病院より、遠絡治療の目的でペレス銀座クリニック(遠絡療法創設者 柯 尚志[こう しょうし]医師)を受診しました。
初診時:左上肢外側(肩~指)と左大腿部内側に触ると気持ち悪くなるような違和感と痛み及び左大腿部外側の電撃痛がありました。

遠絡治療によるアトラス(第一頸椎)と頸部の脊髄や、間脳や脳幹部のライフフローを改善する治療により、左上肢下肢の痛みが治療直後に消失しました。

解説:

この症例は、術後に患者様のストレッチャーからベットの移動の際に、第一頚椎アトラスの脊髄に微細な損傷があったと考えられます。アトラスから右大脳の神経細胞、神経線維のCRPSを起した症例です。アトラスに対する遠絡治療によって、速やかに症状が改善された症例です。(遠絡医学診断指導医 小泉正弘)

作用機序はホームページの「遠絡療法」をご参照ください。

【症例3】両腕のCRPS(左背部の繊維腫摘出手術後から発生した左肩・肘・腕の異常な痛みと2年後に右腕に発生した耐え難い痛み(45才男性 茨城県)

傷病名

左弾性線維腫摘出後 CRPS

既往歴

幼少時 虫垂炎手術
31歳 腰椎ヘルニア手術

現病歴及び治療経過

平成27年6月8日 左背部の弾性線維腫を摘出手術。その後、左肩・左肘・左前腕など摘出部位とは無関係な部位に異常な痛みが出現し、整形外科にてCRPSと診断を受け、リリカ・デパス、ドレニゾンテープで加療。デパスはご本人判断で早期に服用中断。リリカとロキソニンで疼痛コントロール。ドレニゾンテープはやはりご本人の判断で貼ったり貼らなかったりで、平成29年7月からは全く使用しない状態。リリカは平成29年5月で終了。H29年3月より、非常に痛みが辛い時の頓服用としてトリプタノール(25)の処方を受け、時々服用。H29年8月より、右上肢の耐え難い痛みと痺れが発症。

H29年9月1日小泉医院遠絡医療を受診。初回治療時、左上肢は肘から手指にかけての疼痛と痺れ(FPS 4 / 10 )右上肢は腕の付け根から手指にかけての疼痛と痺れ(FPS 8/10)両肩とも痛みのため可動しずらく両手とも握力がほぼゼロ(しびれが強く握っても力がはいらない)状態。初回治療後より、治療ごとに痛みやしびれの範囲が小さくなり、痛みも軽減。肩の可動性も改善し、握力も復活している。(9月8日 治療3回目)

CRPS 症例(1)

解説:

この症例は、手術をきっかけとして左腕のCRPSが発生した後、2年経ってから右腕の症状が発生しています。一般医学では非常に治療が難しい症例でありますが、遠絡医学においては「神経線維破壊症候群TypeⅢ(脊髄の神経線維のダメージから発生した中枢性感作」と考え、遠絡治療を行い改善がみられています。(遠絡医学診断指導医小泉正弘)

作用機序はホームページの「遠絡療法」をご参照ください。

この動画の患者様(45歳男性)は、2年前の背中の手術直後より腕から指先の痛みとシビレで握力が出せなくなりました。CRPSと診断を受け、リリカその他の薬を飲んでいましたが効果なく中断していました。2年たって、今度は右肩から指先にも同様の症状が出て左手の同じように握力が出せなくなり、仕事を休まざるを得なくなり当院を受診されました。治療の結果は動画の通りです。

CRPS(複合性局所疼痛症候群)は、
「触るとビリッとくる電撃痛」
「焼けるように熱く感じる灼熱痛」
「鉄条網でギリギリ縛られているような痛みと痺れ」

手術や怪我がきっかけで創部が治癒しても神経線維のダメージが残り、
いつまでも物が触れたり足に体重を乗せたりするたびに、
ビリっという異常な痛みが突き抜けます。

外から見ても、まったく異常が無いように見えるので、
その痛み・シビレのつらさはご本人にしかわからず、
精神的にもかなりつらい状況で悩んでいる患者様が多いです。

リリカという大変良い薬の登場で以前よりはコントロールしやすくなったといわれていますが、そのリリカの効かない患者様にこそ遠絡療法は効果を発揮します!遠絡療法を行うことで、薬やリハビリなど他の治療の効果を高めることも可能です。

【症例4】3年間原因不明と言われ続けた左足首前面の痛み発作と
下垂足(53才女性 神奈川県鎌倉市)

既往歴

10代~生理痛、重度の頭痛。 頭痛薬、鎮痛剤を服用することが多い。30代後半~めまい。45歳頃~両肘痛。50歳~夏に極端な食欲低下、体重減少 秋に回復を繰り返している。

現病歴

50歳 重い皿が足に落ち、左足前面を打撲。激痛だったが2~3日で痛みは落ち着いた。その後、徐々に左足が挙げづらく歩きにくい状態とともに、ときどき足首の前側をえぐられるような痛みが出現。整形外科では、検査上は問題なく神経の束の損傷があった可能性を指摘された。足首に注射をおこなったところ、腰から左下肢全体が「ズドン」と重くしびれた状態になったが、1日程度で改善した。その後も、しばしば足首前面の激痛発作が1日に数回、数分程度続き、歩きづらい状態が継続した。神経内科等も受診したが、原因不明といわれた。57歳3月より、きっかけなく激痛の発作が頻発するようになり、睡眠も妨げられるようになったため、4月に当院受診された。

治療経過

診察にて、腓骨神経および腰部脊髄、視床等に原因があると診断し、遠絡療法を実施。
治療前は、自発痛、触圧刺激などによる痛みも無い状態だった。左足関節の背屈力が低下、足趾が屈曲し軽くこわばりがあり、左下腿から足部にかけて赤みや腫れ感が軽度あった。歩行時は左側が下垂足の状態で右に上体を傾けて下肢を挙げていた。
治療直後より、上記すべての症状に改善がみられた。その後、週2回の継続治療を実施。ほぼ、1日中あった痛みの発作は、2~3日に1回~数回程度に落ち着き、歩容も改善した状態が維持されている。頭痛も、頭痛薬を飲まずに生活できる日が増えている。

CRPS 症例(2)

解説:

症例の足首の前側をえぐられるような痛みはCRPSの症状と考えます。重い皿が足に直撃した際、腓骨神経の神経線維破壊が起こり、触覚(A𝛃神経線維)から痛覚(損傷した状態のC神経線維)に電気信号が流れ込むようになり、軽く触るだけでも激痛となっています。

症例は、13歳の頃から生理痛、頭痛がありました。頭痛が長く続くとその痛み自体がストレスとなります。また症状が長引くことで不眠症になり、睡眠導入剤の服用を継続されています。長期的なストレスや不眠は、セロトニンの分泌を低下させる原因のひとつになります。

また、50代というのは女性が更年期で性ホルモン動態が不安定な時期であり、特に卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌が低下しますと、脳内セロトニンも減少しやすくなります。

セロトニンの分泌低下状態により下行性疼痛抑制系の機能不全が潜在的にあったため、足の打撲をきっかけとした激痛発作に発展したと考えられます。

更に、痛みの発生には複数の神経伝達物質(セロトニン、ドパミン、GABA,、CGRD、サブスタンスP、NOなど)が関係しており、特にセロトニンの分泌低下が下行性疼痛抑制系の機能に影響を与えます。

遠絡療法は生体の流れ(ライフフロー)を改善します。ライフフローには神経伝達物質が含まれますのでセロトニンの分泌も適正に近づき、下行性疼痛抑制系を賦活させます。その結果、足の激痛発作だけでなく頭痛も同時に改善したと考えられます。(遠絡医学診断指導医小泉正弘)

【症例5】右肩から手指のCRPS

「小泉医院遠絡医療センター」と「接骨院 千寿堂(愛知県刈谷市)」の馬越信行先生(遠絡指導治療師)で連携し治療にあたった、右上肢CRPSの女の子(初診時16歳)の経過について、当院の治療師がブログに投稿した内容を紹介します

当初は触れると悪化する痛みと肘や手指の拘縮が強く、鉛筆を持って書字を行ったり、口元に箸やスプーンを運ぶこともできず顔をお皿に近づけて食事をするなど日常生活もままならず、学校も休学されていました。右腕~手指には触れることができないので、遠絡の治療用押し棒を使っての押圧刺激をすることができず、治療用レーザー照射器(SheepやトリンプルD)を総動員して慎重に遠絡治療を行う状態でした。

ねばり強く治療に通って下さる中で確実に改善され、当初は痛みで全く動かせなかった右肘も曲げられるようになり春から通学も再開。まだ、右腕には外から不用意に触られたりすると痛みが悪化するという恐怖がありますが、ご自分ではしっかり動かせるようになり、なんと高校の「応援団」に参加したとのこと。

「どの子かしら、この子かしら?」と思わず叔母さん目線で動画をチェックしてしまいましたが、本当に感無量です。まだ、もうしばらくは継続治療が必要とは思われますが、きっともっと良くなられてこの経験も生かして世の中を明るく照らす素晴らしい人になっていかれると思います!

[症例5]右肩から右手指のCRPS

愛知県から治療に通われ、遠絡療法を実施するとその場で痛みの改善はありますが、効果が持続するようになるまで少し時間がかかりました。ご自宅でも何かできないか、ということで小泉医師より温冷交代浴を勧められました。

はじめは、手首から先しか行うことができませんでしたが、ホームセンターでシリコンカゴ(後述)を購入。温浴は浴槽で行い、そのまま浴槽に浮かべたこのカゴに腕全体をつけて冷水浴を行う、そしてまた浴槽で温浴を、浴槽につかったまま繰り返したそうです。温冷交代浴を始めてから、遠絡療法の効果も持続しやすくなりました。腕のむくみや色の改善も自覚できるようになり、拘縮していた肘の関節も少しづつ曲げられるようになってきたということです。

シリコンカゴは使わない時に折りたためるので、保管場所にも困らなくて済みそうです。

温冷交代浴は、手や足の冷え症の方にも充分効果が期待できます。 
必ず温浴で終わるように気をつけながら、ぜひ取り組んでください。

►腕のCRPS(複合性局所性疼痛症候群)の温冷交代浴

血圧の収縮や拡張を繰り返すことで血流を促進・増やします。これで「むくみ」や「痛み」「筋肉痛」を軽減します。また他にも自律神経のバランスを整える効果が期待できます。手足などの症状のある部位を、通常42度前後の温水に3~4分、10度前後の冷水に30秒~1分、交互に入れて4~5回繰り返し、最後は温水で終了します。単純な温浴よりも体表温度が2度前後上昇し、交代浴後も約30分間温度上昇が持続します。さらに皮膚を通しての温冷刺激が特殊な感覚神経を刺激しCRPS独特の痛みの改善を促します。

【症例6】硬膜外ブロック後に発生した左足のCRPS

医療従事者向け

CRPS(Complex Regional Pain Syndrome)
複合性局所疼痛症候群

CRPSは、多くは骨折、捻挫、打撲などの外傷をきっかけとして発症する慢性的な神経障害性疼痛です。浮腫、皮膚温の異常、発汗異常、筋力低下、皮膚や骨の萎縮、関節拘縮などの症状を伴う難治性の慢性疼痛症候群です。

CRPSの「complex」とは、臨床症状が時間的変化によって症状が複合的に変化することを意味する。時期によっては炎症症状が主であったり、自律神経症状、皮膚浮腫、骨萎縮、運動障害などが発生したりするということです。

症状が最初に発生した部位は局所(Regional)で,その後症状は局所を超えて、より広範囲に及んでいく。痛みが増悪する中で、臨床症状が複合的に(Complex)変化していく。

TypeⅠ:RSD (reflex sympathetic dystrophy、反射性交感神経性ジストロフィー)主に軟部組織もしくは骨損傷後によって生じるものであるが、明らかに刺激となった出来事と不釣り合いな強い症状を示す症候群。

TypeⅡ: Causalgia (カウザルギー)神経損傷と関連するもの、一般に比較的太い末梢神経の損傷によって生じるものです。通常手や足の領域の灼熱痛、アロディニア、痛覚過敏があります。

►遠絡医学による概念:神経線維破壊症候群

他院でCRPSと診断を受けてから当院に来院される患者の病態を分析すると、病態の発生部位は局所(Regional)のみでなく、大脳、下位脳、脊髄、脊髄神経を原因とする患者が多い。従って当院では一般的なCRPSの概念より、柯尚志医師が提唱した「神経線維破壊症候群」という概念でとらえ呼称した方が病態をより適切に表していると考える。

遠絡の創始者柯尚志医師は、神経線維が破壊され、表在感覚である温度覚・痛覚が亢進し、触覚と圧迫覚 が低下している病態を「神経線維破壊症候群」と提唱しました。

診断基準:

  1. ①触ると電撃痛(痛覚の亢進)或いは灼熱痛(温度覚の亢進)が発生する。
  2. ②感覚の異常(触覚・圧迫覚の低下)を伴う。

神経線維破壊症候群:障害部位による遠絡的分類:

Type1:上位脳(大脳)の神経線維破壊によるもの

片側の上肢、下肢或いは顔面、躯幹に症状が認められる。

Type2:下位脳(間脳、脳幹、小脳)の神経線維破壊によるもの

例:三叉神経痛

Type3:脊髄(SC)の神経線維破壊によるもの

頭部の表面、上肢(肩関節を含む)下肢(股関節を含む)に症状が認められるもの

Type4:脊髄神経(SN)の神経線維破壊によるもの

躯体に症状が見とめられるもの。例:帯状疱疹後神経痛(PHN)

Type5:区域的に発症したもの

末梢神経が障害された部位と、それが支配する末梢の領域に症状が認められる。
例:CRPS

1-CRPS(複合性局所疼痛症候群)の症状

CRPSの症状は不釣り合いな持続性の痛みで、ピリピリ、チクチクします。または、ズキズキ、ガンガンします。ビリッと電気が走るような痛み、焼けつくような痛みを感じます。触られない、触って欲しくない激痛です。アロディニアや痛覚過敏が生じることもあります。

皮膚の限局性浮腫を生じて光沢を伴うが、時間の経過とともに萎縮性変化へ進行していくこともあります。また皮膚の乾燥または発汗過多がみられることもあります。

疼痛によって患肢の使用が制限されることも多い。関節可動域がしばしば制限され、ときに関節拘縮に至ることもあります。筋力低下、振戦、攣縮、手指の屈曲固定または内反尖足位を伴うジストニアなど運動機能の異常が見られることがあります。

その他の症状としては、爪の亀裂や過度の伸長、骨萎縮、脱毛などもあります。

たくさんの医療機関を受診しても「治療法がない」と言われ、抑うつ、不安、怒りなどの心理的苦痛がよくみられます。

2-CRPS(複合性局所疼痛症候群)の診断

1)きっかけとなった外傷や疾病に不釣り合いな持続性の痛みがある

2)以下の4項目のうち3つ以上の項目で、1つ以上の自覚的徴候がある

  1. ①自発痛、痛覚過敏
  2. ②皮膚色の変化、皮膚萎縮、皮膚温の左右差、血管拡張、血管収縮
  3. ③浮腫、多汗、発汗低下
  4. ④関節拘縮、筋力低下、振戦、ジストニア、協調運動障害、爪・毛の変化

☆自覚的症状(病気のいずれかの時期に、以下の自覚的症状のうち2項目以上該当すること)

  1. 1.皮膚・爪・毛のうちいずれかに萎縮性変化
  2. 2.関節可動域制限
  3. 3.持続性ないし不釣り合いな痛み、しびれたような針で刺すような痛み、または知覚過敏
  4. 4.発汗の亢進ないしは低下
  5. 5.浮腫

3)診察時において、上記の項目のうち、2つ以上の項目で1つ以上の他覚的所見がある

他覚的所見(診察時において、以下の他覚的所見の項目を2項目以上該当すること)

  1. 1.皮膚・爪・毛のうちいずれかに萎縮性変化
  2. 2.関節可動域制限
  3. 3.異痛症(触刺激または熱刺激)ないしは痛覚過敏(ピンプリック)
  4. 4.発汗の亢進ないしは低下
  5. 5.浮腫

4)上記の症状や徴候を、よりうまく説明できる他の診断がない

3-CRPS(複合性局所疼痛症候群)の発症要因

(1)三次元的要因

(2)四次元的要因

1)交感神経の要因

(正常) 皮膚の痛みを伝える「Aδ、C線維」、触覚を伝える「Aβ線維」、血管や汗腺に至る「交感神経遠心性線維」は通常伴走しているが、各々の線維間に直接的な電気的結合はない。

►①交感神経遠心性線維と知覚神経の混線

外傷や帯状疱疹などによる神経線維の破壊が起こると、交感神経遠心性線維と知覚神経が接触、交感神経遠心性線維が痛みを伝えるAδ・C線維と触覚を伝えるAβ線維と混線し、痛みを伝えるAδ・C線維と触覚を伝えるAβ線維に伝導するようになる、触っただけでも痛みが起こるアロディニアの原因になる。

►②感覚神経断端での神経腫の異所性発電

交感神経遠心性線維は、常に発火しているのが正常であり、血管の緊張を適度に保っている。その神経末端からノルアドレナリンの神経伝達物質を放出し、ノルアドレナリンα受容体と結合する。

外傷で神経繊維が切断されると、切断された近位部の断端から新たな線維が伸び出して発芽する。発芽した神経線維はまとまって神経腫を形成する。神経腫から異所性α受容体が新生し、この異所性α受容体がノルアドレナリンと結合すると、異所性の発火(活動電位)が発生する。

►③交感神経線維の後根神経節(DRG)への発芽

CRPSの患者さんは、「痛いところを触れない、触ってほしくない、ピリピリと痛む」と訴える。皮膚の痛みを伝えるAδ、C線維と触覚を伝えるAβ線維、および血管や汗腺に至る交感神経遠心性線維は、通常伴走しているが、各々の線維間に直接的な電気的結合はない。ところが神経損傷後に、これらに新たな結合が発生し、交感神経遠心性刺激が知覚神経の求心性線維を刺激すると、このような「触れない痛み」となる。

交感神経遠心性線維が後根神経節まで伸び、後根神経節と結合し、後根神経節への発芽が始まる。この発芽により、交感神経遠心性線維と後根神経節のAδ・C線維・Aβ線維の新たな結合が発生し、痛みとしての信号が発生する,痛みが長期間続くとWDRニューロンの感受性が変化し触れると痛いアロディニアの発生、何もしなくても痛い状態が発生する。

2)神経終末の機能変化

神経終末にあるN型Ca2+チャンネルには、α1,α2,β,δ,γの5つのサブユニットから構成される。α2δサブユニットの役割は、Ca2+が通る穴であるα1サブユニットでのCa2+の通過量を増やす、α1サブユニットを補助するが、正常では存在するだけ、機能してない。

しかし、痛みが慢性化している異常な痛みの場合は、α2δサブユニットがα1サブユニットの立体構造を変化させ、Ca2+を通過しやすくなる。シナプス前終末から、痛みのグルタミン酸やサブスタンスPの放出が増加されるため、「弱い痛みを強く」「痛くないことを痛い」と感じてしまう。

3)脊髄後角の感受性変化(中枢性感作)

脊髄後角は5層に分かれるが、普通、触覚を伝えるAβ線維は、脊髄後角の第Ⅲ層と第Ⅳ層の二次ニューロンにシナプスし、第Ⅰ層、第Ⅱ層の痛み専用の二次ニューロンとの結合はない。

しかし、慢性疼痛になると、脊髄後角よりBDNF(脳由来神経栄養因子)が分泌され、二次広作動域ニューロン-(WDRニューロン)の性質が変わり、Aβ線維(触覚)と第Ⅰ層、第Ⅱ層(痛覚)専用の二次ニューロンとの結合が発生している。Aβ線維の刺激が「痛」担当の二次ニューロンに刺激を送るルートが新たに開拓され、アロディニアの原因になり、何もしなくても痛い状態が発生する。

4)病態時におけるミクログリアの関与

(1)ミクログリアは神経障害、感染、持続的な侵害刺激により活性化され、炎症物質TNFα、IL-1β、IL-6、神経型一酸化窒素 (NO)、ATP、PG(プロスタグランジン)を放出する。これらの物質は痛みの神経伝達物質グルタミン酸、サブスタンスPの放出を促進し、痛みを促進する。

(2)末梢神経損傷時に、ミクログリアが即座に反応して、損傷を修復するための因子を放出する。放出因子の中のBDNFは病態時の痛みに深く関与する。ミクログリアが放出するBDNFがTrkB受容体に結合すると、KCC2の働きを抑制するので、細胞内のCl-が多い状態となる。そこで、GABAがGABAA受容体に作用してCl-チャンネルが開くと、Cl-が細胞外に流出し、細胞内がプラスとなるため、痛みが発生する。(普通、GABAは抑制性神経伝達物質です)。

(3)5次元の要因

1)長期的なストレス

慢性的な痛みで、長期的なストレスにさらされると交感神経活動が活性化され、血管や筋肉が収縮して虚血となり、組織の酸素欠乏と同時にNO(神経型一酸化窒素)などの発痛物質を生成するため、更なる痛みが生じる。また、下垂体から放出されるバソプレシンが腎臓を刺激することで、アンギオテンシンが分泌され、血管が収縮し、組織の虚血で、痛みが生じる。この痛みは更なるストレスとして交感神経を活性化し、痛みを引き起こし、痛みの悪循環となる。

2)遺伝子関係

遺伝子DNAの第6染色体上にHLA 型の情報が一列に並んでいる。HLA 型は、クラスⅠ分子がA,B,Cの3個遺伝子、クラスⅡ分子がDP,DQ,DRの3個遺伝子合計6個遺伝子から構成される。クラスⅡはマクロファージや樹状細胞のような抗原提示細胞に特徴的発現している。ヘルパーT細胞の抗原レセプターに認識される。CRPSの患者には、HLA-DQ8型HLA:Histocompatibility Locus Antigen)の頻度が高い。

3)免疫関係

CRPS患者の90%がβ2-adrenergicReceptor,あるいはmuscarinic acetylcholine receptorに対する自己抗体を有していると報告されており、患者が四肢に外傷を生じた際に、その部のblood nerve barrierが局所的に破綻し、血流中の自己抗体が軸索表面にアクセス可能となって局所性に異常を生ずる仮説が提唱されている。

4-CRPS(複合性局所疼痛症候群)の治療

1、薬物療法

  • 1)リリカ:線維筋痛症治療薬として日本で認可されている唯一の薬です。抗けいれん薬で、神経細胞の興奮を抑える働き(カルシウムの流入を防ぐ)、痛みのアクセルを弱める効果があります。
  • 2)ノイロトロピン:痛みの感覚にブレーキをかける下行性疼痛抑制経路の活性化が認められています。抗うつ作用と鎮痛作用をもたらします。
  • 3)サインバルタ:抗うつ薬で、セロトニン、ノルアドレナリン再取り込み阻害薬、放出されたセロトニン、ノルアドレナリンが元の細胞に戻れないようにする働きがあります。
  • 4)トラムセット:弱いオピオイド系鎮痛薬のトラマドールとアセトアミノフェンの合剤です。神経細胞のオピオイド受容体と結びつき、鎮痛効果を発揮する薬です、副作用は吐き気、便秘、強い眠気があります。

2、交感神経ブロック:

(星状神経ブロック、胸部交感神経、腰部交感神経、上下副神経叢など)

3、アロディニアの患肢の温冷交代浴

手足などの症状のある部位を、通常42度前後の温水に3~4分、10度前後の冷水に30秒~1分、交互に入れて4~5回繰り返し、最後は温水で終了します。これでアロディニアの「痛み」「筋肉痛」「むくみ」など血管の収縮や拡張を繰り返すことで血流の流れを改善し血流を増やします。その結果症状の軽減に繋がります。

4、理学療法や作業療法

目標は可動域の増大、筋力強化、ADL改善など

5、遠絡療法:

上記の治療で改善がみられない場合でも、遠絡療法にて効果を認めるケースを多数経験しています。

作用機序はホームページの「遠絡療法」をご参照ください。

►CRPSに対する遠絡医療の処方式

5-1)上位中枢と下位中枢の縦レベル(遠絡)

遠絡的の考え方:

c+dレベルは上位脳、陰部
bcレベルは下位脳(間脳、橋、延髄)、胸椎(T1-L2)、尾椎(S1-S4)
c+aレベルはC1-C7の上肢、L2-S1の下肢

5-2)大脳の体部位局在のレベル(遠絡)

20世紀半ばにカナダの脳外科医ペンフィールドは、大脳皮質を電気刺激し、どこに触れられているように感じたかを大脳断面にマッピングをしました。精密な動作を行う手や顔は、胴体や脚に比べかなり大きく描かれており中心前回の下方より上方に向かって、順に舌、顔、上肢、下肢の運動を支配する領域が並んでいます。中内は足と手の遠位、中外は手と足の近位、外側は顔と胴です。運動野を破壊すると反対側の部位の運動麻痺が起こります。

5−3)脊椎小脳の体部位局在のレベル(遠絡)

小脳虫部は体幹、虫部外側は四肢近位部、傍虫部は四肢遠位部、小脳半球は手指が占める。小脳の症状は同側性に再現される。身体の左側は小脳の左側、身体の右側は小脳の右側になります。

脊髄に入る線維が順次外側に加わることで形成され、整然としたニューロンの位置とりで、大脳皮質感覚野に至るまで維持されています。体部位局を知ることで、病気の所在をもっと知ることができます。

5−4)脊髄前角ニュ-ロンの体部位局在(遠絡)

脊髄の前角には骨格筋の運動を支配する運動神経細胞が存在する。

例えば、頸髄の前角外側の細胞は手の筋や上肢を支配する。内側の細胞は後頸部、背部、肩の筋を支配する。

仙椎の前角外側の細胞は足の筋や大腿を支配する。内側の細胞は腰、背部、股関節の筋を支配する。

◉上位中枢と下位中枢の体部位局在のレベルのまとめ

臨床的応用は、例えば、「上肢のc+a領域」は大脳の中外、小脳の山腹、脊髄の前角外側に関係します。

5−5)遠絡的に痛みとしびれの考え方

①SC(脊髄)の神経線維の障害からくる痛み
顔面及び肩関節から指まで、股関節から趾まで発生した「痛み」「重み」「触れない痛み」

②SN(脊髄神経)の神経線維からくる痛み
「体幹の痛み」「重み」「触れない痛み」

③SN(脊髄神経)の神経線維からくるしびれ
四肢のしびれ

④SC(脊髄)から同レベルのSN(脊髄神経)へ炎症が波及して神経線維が障害された
顔面及び肩関節から指まで、股関節から趾まで発生した「痛み」「重み」「触れない痛み」とsectionで発生した「痺れ」の合併

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